Valentine02 ページ4
「 できた 」
なんだかんだで、本当に作ってしまった
甘ったるい匂いがキッチンに充満して、ちょっと気持ち悪い。
「 味見… 」
ぼくはケーキのキレ端を口の中に入れた。
それから、勢いよくむせる。
「 にっが！！！！まず！！！！」
良かった、九条天いなくて。
とっとと処理しよう。
ぼくがチョコレートケーキを手に持った時だった、リビングの扉が開いて、「 甘い匂い 」と声がする
「 うっわ、バッドタイミング 」
「 何作ってるの？」
「 …ぼくのおやつ。」
「 へえ。ボクにも食べさせてよ 」
「 は！？だめだよ！！！」
ぼくはチョコレートケーキから九条天を遠ざける。
「 何で 」
「 な、何でって…ぼくの、だから 」
「 でも、捨てようとしてたでしょ 」
「 いやっ、それは 」
ぼくが言い訳を考えている間に、手元のチョコレートケーキが消えていた
「 あっ 」
九条天がチョコレートケーキを口の中に運ぶ。
「 ……… 」
「 …吐いて、美味しくないでしょ。だから、捨てようとしたのに 」
「 …美味しいよ 」
「 嘘つき、いいよそういうの… 」
ぼくがチョコレートケーキを今度こそ捨てようとしたら、止められた。
「 ボクに作ろうとしてくれたんでしょ 」
「 は？何勘違いして… 」
「 違うの？」
九条天の真っ直ぐな目に、ぼくは黙り込んだ。
そりゃあ、上手くいったら、渡すくらいいいかなとは思ったよ。でも。
「 ……違くない、けど 」
「 ならこれはもうボクのだよね 」
「 お腹壊すって！」
1度も、まずいなんて言わずに、九条天は全部平らげてくれた。
なんなんだよ、ほんと。
「 …ばかじゃん 」
ぼくは踞って、小さく呟く。
「 お返し、楽しみにしてて 」
「 ……ん、」
いつまでも、九条天には適わない。
アンハッピーバレンタイン。
今度はちゃんと、美味しいの作ろう。
続く (更新停止中)
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作者名：夜乃ツキ | 作成日時：2019年1月26日 5時
