episode03 ページ4
これで何駅目だろう
気持ち悪さと吐き気と憎悪
「 …っ 」
後から聞こえる、荒い息
要するに、私は今現在痴漢にあっているわけで
学校の最寄まで、後3駅だ。それまで我慢すれば
「 ひっ 」
太ももに、するりと生暖かいものが触れる
やだ何、気持ち悪い。無理無理無理。
無様にも半泣きになる
誰かに助けを縋りたいのに、恐怖で声が出ない。いつもなら、馬鹿みたいに出るのに
上に上がってくる。
「 …っや 」
「 何してんの 」
強く目を閉じた時だった、少し低い声
「 な、何もしてな 」
「 痴漢ですか、訴えますよ 」
「 違っ 」
うっすらと、目を開く。
「 次の駅で降りてください 」
「 ふ、ふざけんな！言いがかりだ！」
電車が止まる。私の手を掴んで、痴漢男を連れて電車から降りた
「 あれ、君 」
「 俺はやってなー… 」
私を助けてくれたその人は、私に優しく笑いかけてから、駅員さんを呼んだ
痴漢男は呆気なく連れていかれ、私も事情聴取と言う形で、駅員さんにその時の状況を話した
そのあいだ、ずっと隣に居てくれたその人は、話が終わるなり「 頑張ったね 」と言ってくれた
「 すみません。迷惑ばかりかけて 」
2日も連続で岡本信彦さんに会えた
それはとても嬉しいことのはずなのに、胸が痛んで仕方がない
「 いやあ、それにしてもよく会うよね〜。大丈夫だった？」
「 は、はい 」
私が下を俯いたままでいると、岡本信彦さんは「 あ 」と何か思い出したかのように、鞄からパスケースを取り出す。
「 はい、どうぞ 」
差し出されたのは、私の定期だった
「 …！拾ってくれてたんですか！？」
「 いや、倒れた時に落としてたから、持ってたんだけど。急いでてそのまま持っていっちゃって。すみません 」
そう言って笑う岡本信彦さんに、胸が、きゅうと締め付けられる
「 ありがとう、ございます 」
今私、岡本信彦さんと話してるんだ
「 うん。あ、これから学校だよね。引き止めてごめん。次はちゃんと声出して助け求めなよ 」
「 は、はい。本当にありがとうございます 」
「 じゃあ、ばいばい 」
岡本信彦さんが、手を振って背を向ける
私は、岡本信彦さんのただのファンで
だから、こんな感情はおかしくて
「 あ、あのっ 」
「 へ？」
「 また、会えますか！」
何言ってるんだ、私は。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夢幻 - 第一話の作者様のやつでもう泣きそうになっちゃいましたぁ (2022年1月3日 21時) (
レス) @page1 id: 40bb55d371 (このIDを非表示/違反報告)
相川こゆき - はじめまして！岡本さんが出てる夢小説が少ないのでこのような面白い作品はオアシスです！天国です！すぐに2の方も読みます！ (2019年1月21日 20時) (レス) id: 81ad50d586 (このIDを非表示/違反報告)
夜乃ツキ(プロフ) - ヒカリさん» 大好きと言ってくださる方がいるのは、とても幸せです。ありがとうございます！これからも楽しんでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします！ (2019年1月19日 23時) (レス) id: afb473d78d (このIDを非表示/違反報告)
ヒカリ - 初めまして。この作品大好きです！毎回更新楽しみにしてます。この２人がどうなるのか凄く楽しみです。 (2018年8月19日 17時) (レス) id: ff956e0929 (このIDを非表示/違反報告)
夜乃ツキ(プロフ) - かげりんさん» コメントありがとうございます。甘々にしたい気持ちは山ほどですが！最初はやはり前途多難、甘くほろ苦い二人の恋愛模様を楽しんでいただければ。頑張ります。 (2018年8月2日 23時) (レス) id: 95fbf1c3a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜乃ツキ | 作成日時：2018年7月21日 20時
