【 声優 】苦くて甘い、恋をして【 岡本信彦 】

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岡本信彦さんに助けられたあの日

近場にあったベンチに座らせてもらい、


「 まだ飲んでないから、あげるね 」


と水を渡され


「 あ、ありがとうございます。
代金返します。いくらですか？ 」


と、慌てて財布を取り出した私を制して、


「 大丈夫。それじゃあ、気をつけてね。仕事があるからもう行くけど、今日はもう安静に寝なね 」


と、颯爽と立ち去っていった


なんだあの可愛いイケメンは。

まだ夢のような気さえする感覚に酔いしれながらも、私は制服に身を包み階段を降りる


「 おはよう 」

「 おはよう。もう体調は大丈夫なん？」

「 うん〜、余裕余裕 」


私はいつの間にか固定になっている席につくと、お母さんの作ったご飯に箸をつける


「 無理しんときや 」

「 はーい 」


母は京都生まれ、京都育ち。東京生まれの父と京都で出会い、結婚。私を生んだ。

私が小学校6年生の頃、父の仕事の都合で東京に上京。そして、年の離れた弟が生まれた。


「 A、ご飯食べたら那岐起こしてきて 」

「 ん 」


私は口の中にご飯を詰め込んだまま返事する


「 ごちそうさま 」


暫くして、朝ごはんを食べ終わった私は、弟の部屋へ直行し、扉を開け放つ


「 おはよう那岐！朝だよ！起きて〜 」

「 やだあ 」

「 やだじゃないわ！」


私は弟が居るであろうベッドの布団を剥ぎ取り、突き落とす


「 いってえ 」

「 起き 」

「 わかったってば 」


私は「 それでよし 」と言うなり、弟の部屋を後にして、カバンを背負う


「 じゃあ行ってくる 」

「 行ってらっしゃい、気をつけて。せや、ぱぱ今日は早く帰れるらしいから、焼肉食べに行くで 」

「 やった！楽しみにしてる！」


私は、青空が広がる外に飛び出した

相変わらずの暑さと、太陽の日差し


最寄りの駅について、改札を通ろうとした時だった


「 …嘘、定期ない 」


ここで気づく、悲劇


「 最悪。え、どこやったっけ 」


私は腕時計を確認して、時間が無いのでとりあえず現金で切符を買って改札を通った

たしか昨日、養成所の帰りに


「 …あの時かあ 」


貧血で倒れた時、私はあとのきたしか、最寄りが近かったので定期を既に手で持っていた

落としちゃったんだ、あそこに

満員電車に乗り込み、私はひとつ、溜息をつく

岡本信彦さんに偶然ながらも出会えて、助けてもらえたのは幸せだったんだけどなあ


「 保険証とか入ったまんまだし。怒られ…っ 」


今日はとことん、ついてないな

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