鶴の戯言 ページ27
その姿は美しい。龍祁をも上回る容姿で到底彼よりも美しい者が現れるとは思えない。流石は天下五剣で最も美しい刀。
「何だい、三日月」
鶴丸も
その瞳を表すのならば、敵を爛欄と刈り取らんとする猛虎の瞳。
静まり返るこの場に不吉な出来事を呼び込むかのように、カラスが鳴き始めた。上空を飛び交い、鳴き声と羽根の音、そして風の音で辺り一面を包み込む。
何かが起きる前兆を表していた。
「俺は一つずっと気になっていたことがあってな。鶴。そちの其の異様なまでの強さ……」
「……ほお?」
沈黙が走った。
三日月の双眸が鶴丸を捉える。逃がさないとでもいうように、薬研、鶯丸の双眸も彼に当てた。
「……鶴、喰ろうたな?行く先々で神仏や妖を」
三日月のその言葉にカラスの鳴き声はぴたりと止んだ。風の声は泣き止み、髪を微かに揺らす微風となっていた。
黙り込む鶴丸。だが彼の瞳は、警戒心を浮かばせていた。
「いやあ、なに、鶴。俺はそちを咎める気などさらさらない。お主が神仏や妖を喰おうと俺には関係のないこと。龍祁に危害さえ加えられなければ俺は何でもいい」三日月の顔に影が差した。鶴丸に手合せにて弾き飛ばされた木刀を拾う。「だがなあ、鶴」
いつの間にか鶴丸の前に移動していた。
とん、と男らしくもしなやかな細い指先が鶴丸の腹を叩く。
「お主の腹から聞こえる。神仏や妖の呻き声が。助けて、とな。
そのうち、その傷事ぱくりと食べられ乗っ取られるぞ」
脅し文句を囁くかのように言った。瞳がやけに細められ、影が差す。
だが、直ぐに何時もの表情に戻し鶴丸の頭を軽く撫でた。
「やあ、天下五剣様は堕ちた神となった狼藉者を案じてくださるか」
ははっ、と笑みを浮かべながら言う鶴丸。
「だがな、三日月。心配には及ばないぜ」
三日月の言葉に被せるかのように言う。
鶴丸は、其の翠の瞳を閉じた。
「
龍祁には少々つらい思いをさせてしまうかもしれないが」
侍の国、日本。其処で行われた彼等付喪神――下級の神のやり取りは誰の目にも触れることはなかった。
だが、唯一鶴丸と神気が繋がっている龍祁は刀を振るいながらも不吉なものを独り感じ取っていた。
8人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
味噌田楽(プロフ) - 更新しました。 (2021年6月1日 21時) (レス) id: 9f9b8eea81 (このIDを非表示/違反報告)
味噌田楽(プロフ) - 更新します。 (2021年6月1日 21時) (レス) id: 9f9b8eea81 (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 三ツ星優星さん» 了解しました。 (2021年3月14日 0時) (レス) id: 15069fcb1b (このIDを非表示/違反報告)
三ツ星優星(プロフ) - 柊 琥珀さん» メモ欄のお知らせです。追記も少ししたので閲覧お願いします(。・ω・)ゞ (2021年3月14日 0時) (レス) id: b581edf190 (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 三ツ星優星さん» お知らせってどこのお知らせですか? (2021年3月13日 21時) (レス) id: 15069fcb1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:参加者様一同 x他6人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ikatomo/
作成日時:2021年1月24日 0時