狂気と異形 ページ24
「『殺さないで、怖い、怖いよ……』……参ったな、君を殺すなんてとんでもない」
「ビー、ガガ、ザザザザッ、ザ――、ザザッ」
ヨナグニサンが子供の腕を優しく掴んだその時、彼の手から血が溢れた。
「……ほう。能力者、なのかい」
腕の代わりに握られていたのは1本のナイフ。
そこに子供の姿は見られない。その様子を見て直感で分かった「この子は能力者」だと。
「ん?まさかだが君はこの姿だと動けない?」
さっきからその子が動く様子はない。手の中にあるままだ。
ヨナグニサンはナイフになった子供をそっと地面に置きしゃがみ込む。
「ごめんね。怖かっただろう……?この様子だと、勇気を出して姿を変えたんじゃあないかい?」
優しく声をかける。するとカタッ、と動きナイフの姿から元の姿に戻った。
子供はヨナグニサンの怪我した手を心配そうに見つめている。
「あぁ、これかい?大した事はないよ。それよりも君の方が心配だ。この様子だと酷い扱いを受けてきたんじゃあないか?」
「――――ピ……ェ……」
「うんうん、そうかい。……僕はそんな君を救いたいんだ」
「……?」
突然そんな紳士的な事を言い出すので。子供の頭にはてなマークが浮かんできた。
その疑問を解消するかの様に手を差し出す。
「僕に着いてこないかい?怖い思いをさせた後に言うのも変だが……」
「――――ザザッ」
ヨナグニサンの手の平に子供の小さい手が重なる。
子供の思考が分からないが着いていくような気になったらしい。
「それは良かった。……ところで君の名前は?」
子供は首を横に振る。その動作から察するに名前がないのだろう。
「うーん……それじゃあまず名前をつけるところからか。白いし……『カイコ』でどうだろう」
「――――!……♪」
名前をつけられたことが余程嬉しかったのかヨナグニサンに抱きついてきた。
「くっふふ、そんなに喜ぶとは。それじゃあここから離れよう、まだ危険だからね」
異形の子供と手を繋ぎ歩く狂気を超えた人間。
それは微笑ましくもあり、恐ろしくも思えてしまう。
…………かくして子供――カイコを拾ったのはいいとして。それはルーヴの人達に受け入れて貰えるのか。
ヨナグニサンはその事について全く頭に入っていなかった。
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味噌田楽(プロフ) - 更新しました。 (2021年6月1日 21時) (レス) id: 9f9b8eea81 (このIDを非表示/違反報告)
味噌田楽(プロフ) - 更新します。 (2021年6月1日 21時) (レス) id: 9f9b8eea81 (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 三ツ星優星さん» 了解しました。 (2021年3月14日 0時) (レス) id: 15069fcb1b (このIDを非表示/違反報告)
三ツ星優星(プロフ) - 柊 琥珀さん» メモ欄のお知らせです。追記も少ししたので閲覧お願いします(。・ω・)ゞ (2021年3月14日 0時) (レス) id: b581edf190 (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 三ツ星優星さん» お知らせってどこのお知らせですか? (2021年3月13日 21時) (レス) id: 15069fcb1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:参加者様一同 x他6人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ikatomo/
作成日時:2021年1月24日 0時