兄 ページ4
Side:カネキ
「...リゼ姉って、呼んでいーい？」
カ「え...？いや、それはちょっと、どうかな...。」
「あんた、リゼ姉に似てる。匂いもそうだけどォ、撫で方もそっくり。」
駄目？と上目遣いで見られ、う...と口ごもってしまう。
姉が恋しいというのは分かる。
僕も身近な人物、母を亡くしたから。
母が死んでからというもの、心にぽっかりと穴が空いたような錯覚に陥った。
恋しくて、寂しくて、苦しくて。
母に、会いたくて。
でも、絶望に飲み込まれそうになった時。
その穴をヒデが埋めてくれた。
この子にはまだ、穴を埋めてくれる人がいないんだろう。
だからこそ、僕にリゼさんを重ねようとしてる。
カ「残念だけど、僕は君のお姉ちゃんにはなってあげられない。...だけど、お兄ちゃんならどうかな？」
「兄ちゃん？...兄ちゃん。兄ちゃん。」
何度か噛み砕くように「兄ちゃん」を繰り返した後、彼は僕の目を真っ直ぐに見てきた。
もう、僕の向こうにリゼさんを見てはいなかった。
「あんた、名前は？」
カ「金木研だよ。」
「カネキケン...。んじゃ、ケン兄ねェ。ボクの方は名前ないんだけど、リゼ姉にはAって呼ばれてた。」
カ「じゃあ、Aくん。」
「ん。」
満足そうに笑う彼に、僕も笑い返した。
喰種には、戸籍がない者がいると聞いた。
名前がない、と平然と口にするAくんにも恐らく、戸籍はないんだろう。
通常なら生まれてすぐ、両親が頭を捻って愛情たっぷりの名前を付けてくれる。
でもそれは、人間の常識。
喰種は常に危険と隣り合わせであり、彼の両親も名前を付ける暇さえない程緊迫した状況の中彼を迎え、何かしらの理由があり別れざるを得なかったんだろう。
僕が当たり前のように享受してきた環境は、喰種にとっては当たり前ではない。
戸籍のない喰種は人間社会に溶け込むという選択すら与えられないのだ。
働くことも出来ず、学校に行くことも出来ず。
大人になっても、ひらがなすら満足に書けず。
ひっそりと、闇に生きるしかない。
Aと呼ばれていた、と語るAくんは笑顔だった。
多分初めて名前を付けてくれたのがリゼさんなんだろう。
彼にとってリゼさんは、姉であり、同時に母のような存在でもあったのかもしれない。
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エンプティ(プロフ) - え、待って東京喰種とHUNTER × HUNTERって私の好きな作品のじゃないですかァ!!!!!しかも男主って、最高ですな!!!! (2020年10月19日 0時) (
レス) id: 136ec5e8ca (このIDを非表示/違反報告)
色 - 凄い良いところで止まっていて続きが気になります...！ (2016年12月26日 1時) (レス) id: 12fc0e6beb (このIDを非表示/違反報告)
Sincerity誠(プロフ) - はじめまして。主人公がとても可愛らしく思いました。語尾が伸びてたりしすぎると少々鬱陶しいですが、そこら辺の配慮がしっかりされていて読み易いし、好感が持てました。更新お待ちしてます。 (2016年11月15日 10時) (レス) id: b5331223fe (このIDを非表示/違反報告)
他力本願(プロフ) - ヒ、ヒソカだと��(ﾟДﾟ) 夢主とヒソカの絡み...ちょーおもしろいです!! 仕事になれるまでずーっと待ってます！ (2015年11月26日 17時) (レス) id: ad557e9716 (このIDを非表示/違反報告)
頼斗-Yorito-(プロフ) - コトミさん» 面白いと言って頂けて嬉しいです(*´ω｀*)ありがとうございます！頑張りますね(^-^) (2015年11月22日 23時) (レス) id: a813bd4cbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：由良 | 作成日時：2015年7月15日 15時
