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未だにギラギラと煩いネオン街を横目に
隣接する雑居ビルが出す可燃ゴミと
近場の飲食店からの不廃物の臭いが混ざる路地裏で
本降りになった雨の中、
あの不思議な人から借りた傘をさしながら
「待ってて」と電話を切った彼を待つ。
そういえば、あの頃も何度かこうして
バイト終わりに従業員用の入り口にしゃがみ込んで
彼を待っていた。
知り合いの全くいない東京のハズレで
気づいたら二十歳になって
夕方のシフトから深夜帯へと移ったあの日
祐介くんが二十歳を祝ってくれた。
半値になっても売れ残って
形の崩れた廃棄手前のバナナボートと
どこのメーカーかは分からない
甘いチューハイの350ml缶が入った
ガサガサ鳴るのが煩いスーパーの袋を下げて
「おめでとう」の後に取って付けたような
「ございます」を付け足した祐介くんは
少しだけ俯いて鼻を掻いていたっけ。
「茉由？」
懐かしい少しだけ掠れた高めの声が
傘に当たる雨音を裂きながら耳を掠め取った。
「茉由、」
「あ、、」
「待たせちゃったよな、ごめん」
「、、ううん、祐介くん、お疲れ様」
「茉由も」
大きめの黒いシャツをダルっと羽織り
緩めのジャージにビーサンを引っ掛けて
安いビニール傘をさして照れ臭さそうに笑う
あの頃と変わらない彼は当たり障りのない
たわいない言葉を降らせてくれた。
「うはっ、なんか、うん、懐かしい笑」
「あははっ、祐介くん、笑い方変わらないね」
少し馬鹿にしたような祐介くんの笑い声が
あの頃から凄く心地よかった。
それは、今も、変わらないや、、
「茉由も変な顔して笑うの変わってない笑」
「な！ そういうとこだよ、そういうとこ！」
「あー、はいはい笑」
煩い煩いと顔をしかめながら
片耳を片手で押さえながら祐介くんは笑う。
本当に変わらないな、、
でも、なんで、、
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作者名：八名 | 作成日時：2018年5月23日 19時
