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《なぁ、茉由》
「ん、どしたの？」
《、、や、うん、元気、かなと》
「えー、何それ笑」
《っ、笑うなよ！
久々過ぎて何から話せばいいか、》
「、、うん、そだね、
分からないね、何から話せばいいか、」
《、、ん》
祐介くんと知り合ったのは深夜のスーパー。
私が10代最後の年に始めたスーパーのアルバイト。
そこで祐介くんと同じシフト帯で働いていた。
祐介くんは私よりも一回りも年上なのに
いつまでも敬語で話す不思議な人だった。
笑う時に俯く癖と困ると鼻を掻く癖が可愛いくて
男の人には珍しい少し掠れた高めの声で
欠伸した時にチラッと見える銀歯が印象的だった。
祐介くんがあまりシフトを入れなくなって数ヶ月後
突然ギターケースを担いでやって来ては
レジにいた私にクシャクシャになった紙をくれた。
ー、、「聴きに来てくれませんか？」
彼が�爛�リープハイプ�瓩辰謄丱鵐匹�
フロントマンを務めていたのを知ったのは
そのクシャクシャに丸まったチケットで行った
祐介くんの初めてのワンマンだった。
ステージの上で祐介くんは
�猗�崎世界観�瓩箸靴討△旅發だ爾鯆イ蠑紊欧�
強めのストロークでギターを弾いては
少し怒りっぽい彼らしい言葉を並べていた。
音楽なんて微塵も関心のない私は
全く乗り気じゃなかったのに
祐介くんは、尾崎世界観は、
スルスルと私の中に入り込んで
耳から全てを奪っていく感覚を
初めて覚えさせてくれた。
《、、ねぇ、茉由》
ー、、三枝さん
あの呼び方から�瑯�由�瓩吠僂錣辰燭里�
いつ頃のことかは全く覚えていないけど
祐介くんが私の名前を呼ぶと
あの頃からいつもくすぐったいのに気持ちよくて
むず痒いのに嬉しい、両極端な感覚があった。
「祐介くん？」
《、、その、さ》
「うん、どしたの？」
《、、良かったら、久しぶりに、会いませんか？》
苦虫でも潰したような顔してるんだろうな、、
この受話器の向こうで、、
やりどころのない気持ちを隠すように
敬語を使う祐介くんもあの頃のまま。
もう何年も会ってないはずなのに
彼の癖も声も何もかも覚えている私は
変わってるんだろうか、、
.
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作者名：八名 | 作成日時：2018年5月23日 19時
