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「、、冷たっ」
頬に当たる冷ややかな感覚は
ずっと店内にいた私には新鮮だった。
所謂オーバーサイズとか言われるワイシャツに
突っかけサンダルで店を飛び出した私を
店内よりもギラつくネオン街を行き交う人は
汚いものでも見るように目を逸らしていく。
どんなに頑張ってもここにいる限り
蔑まれるのはきっと当たり前で
こんな私を受け入れて欲しいだなんて
そんな図々しい事、考えもしないけど
少しぐらい、少しぐらい、
わかってくれる人が居るって思っても
バチは当たらないよね、、
「もう本降りになりそうだなぁ」
バチバチと眩しいネオンに照らし出される雨を
頻りに触れようと背伸びをした。
「、、っえ？」
もう少しって手を伸ばした瞬間、突然雨が止んで
何かに打ち付ける雨音だけが耳を覆った。
「何してんの、風邪引くよ」
何かにぶつかる雨音が
傘に遮られたからだとわかったのと同時に
柔らかい声が一緒に降ってきた。
聞き覚えのない声にビクビクしながら振り返ると
線の細い長身の男の人が傘を差してくれていた。
「女の子がこんなとこいたらダメじゃん」
その人は息を白めているくせに
私に傘を差し出して自分はびしょびしょで
それなのに私の心配ばかりする変な人だった。
「なんでこんな薄着で雨の中、、
女の子なんだから身体冷やしたらダメだろ？」
「いや、あの、」
「俺の傘使って、さっきコンビニで買ったやつ
安物のビニール傘で申しわけないけど」
私よりお兄さんの方が寒そうだけど、、
びしょびしょに雨にうたれつづけるその人は
戸惑う私に気づいたのか「あ、ごめん」なんて
苦そうに笑って
「突然声掛けてごめん、その、ここ、
そんな格好で女の子1人でいたら危ないし
変なやつゴロゴロ居るから、、って
声掛けた俺が言える立場じゃないけど」
「あー、えと、とりあえず、傘、使って！」
そう言うと長身のその人は
「それじゃ」なんて恥ずかしそうに笑っては
私に無理やり傘を持たせると雨の中へ消えた。
『あ！ いた、ユマちゃん、氏名入ったよ！』
店からボーイに呼ばれ貰った傘を畳みながら
またミラーボールが煩く光る店内へ戻った。
不思議な人だったな、、
あの人、風邪、引かなきゃいいな、、
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作者名：八名 | 作成日時：2018年5月23日 19時
