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「はぁ…」
兵舎の敷地の隅にある大きな木に凭れて
章大は独り、空を見上げていた。
大好きな綺麗な青空と対照的に
黒々とした感情で覆われた自分が恨めしく思えて
また章大の口からは同じような音が漏れていく…
そんな自分に気がついた時には、腹が空くことも、食べることへの意欲もなくなり
亮と忠義、そして多くの年下訓練生の前で自分を取り繕うことにだけしか
頭が回らなくなっていた。
「なんで、今なん…」
とうに覚悟は出来ていたはずで
そんな時代に生きている自分を受け入れているはずなのに…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
４人の中でも章大は、人一倍優しく、そして正義感の強い子である。
年下の訓練生の面倒見もよく、
争いごとが起きた時には教官が来る前に事態を沈静化することもしばしばだった。
そんな章大は、
素直に声に出すことの出来ない不安を
もう2年も一人で抱えてきた。
「しょ、章ちゃんっ、むし！！虫出た！！」
「ぎゃぁああっ！！飛んだぁっ！！」
「はいはーい。虫さんどこいった〜？」
章大は、心優しい子だ。
小さな頃から、人だけでなく動物にも好かれるような人間で
普通の人間なら殺してしまうような小さな虫も逃がしてあげるような子ども。
「元気に生きるんやで〜？ばいばい」
訓練兵になってからも
とにかく虫が苦手な亮や忠義に頼まれて迷い込んだ虫を捕まえて逃がすこともしばしば。
そんな優しすぎる章大に亮は疑問を抱いたが、
「やって同じ生命体やから」と満面の笑みで返され、何も言えなかった。
虫の一匹も殺せない。
そんな自分が人を殺めることなどできやしない。
たとえ今は敵国の人間であっても、
この戦争が終われば仲間になれるのかもしれないんやから…
戦争一色に染められたこの国では
脳みそがお花畑なのかと揶揄されそうなこんな考えを
章大はずっと抱いてきた。
だが、そんな想いとは裏腹に、容赦なく毎日毎日幾千の命がこの世から散っていく。
章大の周りでも、かつての仲間の死が誉れとなって伝わってくるのが日常化していた。
耳を塞ぎたい想いで、それらを称え、受け止めてきた章大だったが
すばるを想い、嘆く隆平を見て、
必死にとどめてきた感情が溢れ出し、章大を飲み込んだのだ。
戦地に出たら、自分の手で、誰かを絶望に追い込んでしまうんや…
そんなこと、僕にはできひん…
どうにもできない深い苦悩が
章大の体も心も蝕んでいった。
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You(プロフ) - 今更ながらこの作品に出会いました。良き結末であることを祈っております。 (2021年5月24日 1時) (
レス) id: 4838a1782f (このIDを非表示/違反報告)
よんぱち(プロフ) - 愛∞さん» ありがとうございます！世界観大切にしながら頑張りますね(^^) (2018年10月14日 22時) (レス) id: 133e76bc63 (このIDを非表示/違反報告)
愛∞(プロフ) - 相変わらず、すごいですね。こういう雰囲気とか世界観に最近ハマってます。頑張って下さい！ (2018年10月14日 11時) (レス) id: 64e52e5a9f (このIDを非表示/違反報告)
愛∞ - 新作作ったので、ぜひ読んでください。(大嫌いな君。) (2018年7月9日 21時) (レス) id: bcf804df6a (このIDを非表示/違反報告)
よんぱち(プロフ) - 愛∞さん» ありがとうございます。愛∞さんもがんばってくださいね(^^) (2018年6月30日 21時) (レス) id: 9f05dd0fde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よんぱち | 作成日時：2018年6月17日 21時
