あのひのまるに

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「今日の料理はお口に合いましたか？」


食後、村上が軽くなった盆を持っていけば

変わらぬ笑顔でアイツはそう問う。

故郷・大阪の言葉に近い、京都弁の混じった気分の高まったような声で尋ねられ

村上の口からは意図せずして「あぁ」と声が漏れてしまった。


「よかったです。完食してくださり、ありがとうございます！」


不愛想な一言に、その何倍も愛を込めた言葉を返す、ただの料理番。

そんな彼に村上はいつしか一目置くようになった。


病弱で兵士になれない、

この国にとってお荷物でしかない不遇の男に

なぜ自分がそのように意識を持っていかれるのだろうか、

村上にその答えはまだ見つかりそうにない。


「粕汁…久しぶりに食ったわ…」


村上の本音はいつも、一人布団に寝転んでから零れる。


「美味かった…」


こんな言葉すら掛けてやれない世界。

言論の自由なんてものはない。

兵を育てる教官である以上、

気を抜くような発言は禁じられており、

むしろ、たるんだ精神を見せる奴をしごく立場にある村上に

料理の感想など述べる資格はないのだ。


満てた腹を撫でながら

今日も隆平についての己の気持ちに疑問を投げかけながら

村上は明りを消し、深い眠りについた。

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