ここにいたこと【４８】

１３ ページ15

「おつかれー」


暗い雰囲気が漂う劇場をそそくさと独りあとにし、家路につく。



今日は3月31日。

日本中のあちこちでいろんな人が別れを告げ、

新たな生活を始める心構えをする日。



私はまだ心の整理、ついてないな・・・

明日が初日。

チームKとしての第一歩となる日。

そんなの、嘘みたい。



季節は、春だけど

夜はまだ肌寒くて。

帰り道にある公園のベンチでホットコーヒーを飲んだ

「ふぅ〜っ。あったまる〜」

ホッと一息ついて、あたりを見回せば

街灯に照らされて

桜が咲いているのがわかる。


「夜桜、か。」


昼間、太陽の元で人々を笑顔にさせる桜とはまた違う

ひっそりと咲いている桜には妖艶さがあって、

これもこれで美しい。

満開の木々から風に吹かれ

一枚、また一枚、宙へと舞っていく花びらたち


「教室の窓辺にはうららかな陽だまり________」


明日、披露する歌を独り

なんとなく口ずさんでみた


「それぞれの未来へと・・・旅立っていくんだね・・・」


Aとの未来

おんなじだと思ってた・・・

少なからず

明日同じステージに立てるって信じてた・・・


「新しい世界のドアを・・・自分のその手で・・・開くこと・・・・」



私の頬を落ちる涙の花びらたちを

冷たい夜風が拭い去っていった

１４→←１２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す