ここにいたこと【４８】

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《勝てない》

そう言われて悔しい。

だけど、ここで止まってたらダメなんだ…

私は、AKB48でやっていくと、チームKを最強のチームにすると決めたから


「なんでですか…」


小さく情けない声で

ドアの向こうの人に聞いた


「Kはなんで…勝てないの…

　Kに必要なものってなんですか…」


ヒントが欲しい…

四方八方ふさがれたようなこの気持ちからの逃げ口がほしい…


「私は、今のままでは、勝てないと思うんです。」


その人は続けて言った。


「チームAは、AKB48というグループの開拓者。

　何もなかった大地を耕して、少しずつファンを増やして、大きくしてきた１期生のチーム。

　そして、今、チームKを見に来てくれる人の大部分は、チームAのファン、ですよね？」


「はい…」


「その人たちから見たら、チームKは後からやってきて

　チームAがせっかく耕した土地に苦労することなく居座りに来たよそ者、なんです。」


「そんな…」


「それだけじゃない。

　衣装も、楽曲も、振付だって全部全部チームKはチームAのおさがり。

　ただのコピーです。」


淡々と落ち着いた声で言われることは

残酷な現実で。

だけど、言われることは全部事実で…

悔しさに溢れ出す涙を拭いながら話を聞いた。


「だから、チームKがチームAと同じことをしてちゃ絶対に勝てません。

　チームKらしさを作らなきゃ」

「Kらしさ…」

「何かひとつでいいと思うんです。

　Kはこんなチームだ。ここがすごいんですっていうアピールポイントを作れば

　きっとKを応援してくれる人だって増えると思いますよ。」


その声を最後に、コツコツと足音が遠のいていった

ギーッとドアが開く音がしたのが聞こえた後、


「頑張ってね、優ちゃん」


小さな声でたしかにその人はそう言った。

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