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「…」
それに、なんとなく彼女を目で追うようになって分かったことがあるのだが、ここ最近のAちゃんは何故かテレビの出演が決まると、決まって顔に影を落とすようになった
どうやら俺と……川上以外はそれに気づいていないらしく、誰もその事について言及する様子がない
聞きたい気持ちはあるのだが、誰も聞いていないとなるともしかしたら踏み込んではいけないことなのでは、と無駄に働いてしまう想像力が訴えかけてきて、未だに聞けずじまいになっている
「Aちゃん、疲れてんなら休んで良いからな?」
「え…?」
「最近テレビ出演も多いし、今大分疲れた顔してるぞ」
Aちゃんが無理しがちな子だということは分かっているから、聞けない代わりにポンポンと頭を撫でながら「無理すんなよ」と声を掛けて、機材を取りに隣の部屋に足を運ぶ
確かここに…と若干散らかった物の中からお目当ての物を探していると、ガチャッと閉めた筈の扉が開いて、誰かが入ってきた
振り返るとそこには、顔をムスッとさせた川上。この表情をしている時の川上は、大体機嫌が悪い
だが、俺は今日ここに来て朝の挨拶くらいしかあいつとは交わしていない。別に仲が悪いとかではなく、特に話す事がなかったからだ。なのであいつの機嫌を損ねるようなことはしていない筈なのだが
「…なんで」
「は?」
「なんで貴方はそうやって、期待ばっかさせんねん…ッ」
グッと胸ぐらを掴まれて、余計に分からなくなる。そもそも、ここまで川上が感情を露にすること自体、かなり珍しい。こんなにもキレさせるようなことはやっていない筈だが、人間というものは分からない
もしかしたら、俺が気づいていないだけで川上にとって許せないなにかを無意識にしてしまっていたのかもしれない
「なんのことだよ」
「…Aは…あの子は、伊沢さんの事が好きなんですよ…?」
「……は、ッ?Aちゃん、が、俺を?」
「そうですよ…泣きながら、伊沢さんが触れるたび息が出来んて…それなのにっ、」
―――中途半端にあの子を、期待させないください
睨み付けるような、懇願するような、鋭い眼光。その眼で、全てが結び付く。そう、か。川上は、Aちゃんのこと…
俺が触れるたびにAちゃんが顔を赤くしていたのも、以前のように肩を組むと顔を背けられるようになったのも、そういうことだったのか
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白菜(プロフ) - しぃさん» いえいえ!ご希望に添えたなら良かったです! 今回は話数が限られていたので、初めて直接うらツク内に書かせていただいたので少々展開等が変になっているかもしれませんが、そこも愛嬌ということにしておいてくださると嬉しいです(笑)リクエストありがとうございました (2020年2月2日 0時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - 白菜さん» ごめんなさい!完結後にもかかわらずリクエストしてしまって…でも最高でした!もう推しのにやにや顔を想像して昇天しそうでした← (2020年2月1日 22時) (レス) id: 1457e73937 (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - 白菜さん» そうですね。以後気を付けます! (2020年1月27日 22時) (レス) id: 1457e73937 (このIDを非表示/違反報告)
まつりか(プロフ) - 白菜さん» 神ですよー!にしても少し回復したようで良かったです!私含め皆さんが白菜さんの事気にかけていたので、コメントを見てもっともっと元気を出して貰えたらと思います! (2020年1月27日 21時) (レス) id: e802cc95c8 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - しぃさん» ありがとうございます!リクエストの方ですが、あと二話ほどなら入るので短くはなりますがなんとか書いてみます!そして細かいかもしれませんが、次回からはお名前をsngwというように伏せていただけると助かります(笑) (2020年1月27日 21時) (レス) id: f8ddf3423a (このIDを非表示/違反報告)
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