【Q|K】影の薄い彼女は薄影さん #2【izw】

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「…伊沢さん…なんで…」

「はぁっ、はぁ…シークレットゲストはこちら！って呼んでも全然出てこねぇから、探し回ったじゃん…」


　こんな状況でも空気を和ませようとしてくれる伊沢さんに嬉しさと、それに勝る罪悪感が襲う
　きっと、会場には彼を楽しみに待っている人達が沢山居るはずだ。シークレットゲストなのに、キャーともならない私より、100%皆が待ってる彼が、ここに居て良いはず無いじゃないか


「っ戻ってください！視聴者さんは皆、伊沢さんの事を待ってるんですよ！」

「俺はAちゃんも一緒じゃないと戻らない」


　今日の事で分かったんだ。私は、ステージの上で輝くよりもこうして裏でひっそりと動き回る方がやっぱり向いてると

　影が薄いままで良いのかと聞かれたら、首は横に振ると思う。けど、今は裏で彼らを支えるだけで良いんだ
　なにも、人気絶頂中の彼らと一緒に光を浴びる必要なんて、無いんだ。きっと、誰もそんなこと望んでない
　化粧なんてせずにマスクと眼鏡で顔を隠してたまに動画に出るくらいが、丁度良いんだ


「…私は、良いです。視聴者さん達が求めているのは、影の薄い私じゃないんです…誰よりも輝いてる、伊沢さん達なんです……だからっ」

「…俺達がAちゃんを求めてるってだけじゃ、駄目かな？」

「っ…」

「Aちゃんは、お父さんに条件持ち出されたときも悩みもせずに辞めるって言おうとしてくれたり、その後も初心者なのに誰よりもクイズの本読んで作問してくれたり、靴擦れするくらい歩き回ってくれたり、いろんな場面で俺らの役に立とうとしてくれてた

　今日の機材だって、配置完璧だって福良さん笑ってたよ。問題の添削してる川上も発想力豊かだなって笑ってたし、山本やこうちゃん達は今日Aちゃんと出れる事、本気で喜んでた


　…俺らはただそんな、頑張り屋で皆を笑顔に出来るAちゃんと、一緒に笑ってクイズしたいだけなんだよ」


　目の前に、指先だけが少し固くなった手が差し出される。「行こう、Aちゃん」と言う伊沢さんの目は、私がこの先なんと言おうと揺るぐことはないと言っているようで、躊躇いがちに手を重ねる
　瞬間、ぎゅっと強く握られる手。その手は不思議と今までの不安や緊張を溶かしてくれて、代わりに、大丈夫だという強い念を手を通して送ってくれた

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