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二度目の柱合会議が開かれ、Aが地下牢から此処まで連れて来られた。
今日は少しずつ回復して来た理恵さんも、柱合会議に参加することになった。

「理恵はあの時、何をしていたのかな?」

お館様はいつも通り、優しい声色で理恵さんに問いかける。
彼女は怯えているような、悲しんでいるような、そんな表情を浮かべていた。

「私、Aちゃんを止めようとしたんです!
男の子が慌てて走って来るのが見えて…でもAちゃんは、そのまま刀を……」

彼女は両手で顔を覆う。その瞳は涙目だった。

「私が悪いんです…あの時ちゃんと、Aちゃんを止めていればよかったんです」

「そんなことはない、お前はちゃんとやった」

伊黒さんの言葉に、理恵さんは顔を上げ、ありがとうございます、と言った。
僕は心底腹が立った。

「……それで、その後に胸ぐらを掴まれたと言ったね。何があったのかな?」

その瞬間、理恵さんはわざとらしく胸元を抑えて、隣に座る胡蝶さんの裾を握った。
胡蝶さんは心配そうに、理恵さんの手を握る。
その間も、Aは顔を下げた状態のまま、ピクリとも動かなかった。

「Aちゃんに胸ぐらを掴まれて、私がやったことにするように、脅されたんです…!
酷くて、怖くて……!」

泣きだした理恵さんを、胡蝶さんと甘露寺さんが優しく抱き締める。

「……Aさん、それは本当ですか?」

胡蝶さんの言葉に、Aは顔を上げる。
昨日と同じような、笑顔だった。

「……………………」

彼女は何も言わない。ただただ笑うだけ。
僕は無性に腹が立った。
やってないなら、どうして言わないのか。

「ねぇA、どうして何も言わないの?
やってないんでしょ?」

僕は思わず言葉を口に出し、縋るかのように彼女と視線を合わせる。

「…時透くんは、Aちゃんの味方なの…?」

理恵さんが、涙声でそう言う。

「……そうだよ、僕はAの味方」

今言っても遅い。
分かっているけど、何もしない訳にはいかなかった。

僕がそう言うと、背後から思いがけない言葉が聞こえた。


「俺も、Aがやったとは思えない」




冨岡さんだった。

九→←七



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rin - めっちゃ泣いた...... (2023年5月3日 19時) (レス) @page38 id: c3282cfa2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 素敵な作品をありがとうございました! (2022年1月4日 19時) (レス) id: 2a1788ef2b (このIDを非表示/違反報告)
Soleil(プロフ) - あいさん» 確かに( ^_^ ;) (2020年10月25日 23時) (レス) id: c8ab14084f (このIDを非表示/違反報告)
  - あいさん» w (2020年6月28日 15時) (レス) id: f0c80c11c2 (このIDを非表示/違反報告)
あい - なんか、鬼滅絡める必要ある? (2020年6月20日 15時) (レス) id: 9ae16e851a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Soleil | 作成日時:2019年9月25日 22時

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