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月の綺麗な夜、私は理恵さんと共に任務に向かっていた。
柱合会議で話題にあがったある凶悪な鬼の情報を、掴む為に。
屋敷を出る際に、時透くんに、また理恵さんと任務なの、と言われた。
とても嫌そうな顔をしていた。
理恵さんは、みんなに好かれている。
無愛想で無口な私は、みんなに嫌われている。
柱の皆も、あまり私と話そうとはしない。
話す時と言えば、柱合会議や理恵さんと間違われて声をかけて来る時。
きっと時透くんだって、私と理恵さんが共にいることに不快感を感じているんだろう。
あの表情の意味はそれしか思い付かない。
嗚呼、そんなに私のことが嫌いなのだろうか。
「此処で二手に別れましょう。
一時間程で合流しましょう、その際にどちらかがいなければそちらに向かいましょう」
「分かった。じゃあね」
そう言って理恵さんと分かれた。
けれどこれが、失敗だった。
「誰かッ!誰か助けてッ!!!」
一時間後、姿が確認出来なかった理恵さんの方角を追って走っていると、聞こえて来たのは女性の悲鳴。
その声を追って駆け付けると、鬼化した女の子が、一回り体格の大きい男の子を押し倒し、今にも喰らおうと押さえ付けていた。
そんな少女を少年から引き剥がそうと、必死に少女を引っ張る女性の姿。
二人の母親、だろうか。
刀に手を添えて駆け寄ると同時に、私の目の前を理恵さんが通り越して行った。
彼女は母親の着物の首元を乱雑に引っ張り、少女の鬼から引き剥がした。
そして少女の鬼の頸を掴んで外へと引きずり出した。
今直ぐにでも家族の前で頸を落とそうとする理恵さんに、慌てて近寄る。
「待ってください!理恵さん!」
「……Aちゃん、どうして止めるの?
この子、鬼なんだよ?」
そう言って、理恵さんは少女の頸を絞める。
私は、少女の瞳から涙が流れているのを、見逃さなかった。
___自我がある。
「待って!お願い、殺さないで!
春子は何も悪くないの!帽子を被った奇妙な男とすれ違った時に、急におかしくなったの!
お願い…殺さないでッ…!」
帽子を被った奇妙な男__まさか、鬼舞辻…!?
「理恵さん、その子は鬼舞辻を目撃している可能性があります!
幸い、まだ自我も保っています。
拘束しましょう」
しかし彼女は刀を抜いて、少女の首元目掛けて振るおうとする。
それに勘づいた少女は理恵さんを蹴飛ばし、彼女から距離を取ろうと走り出そうとした。
その瞬間、理恵さんは再度力を込めて刀を振るう。
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rin - めっちゃ泣いた...... (2023年5月3日 19時) (レス) @page38 id: c3282cfa2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 素敵な作品をありがとうございました! (2022年1月4日 19時) (レス) id: 2a1788ef2b (このIDを非表示/違反報告)
Soleil(プロフ) - あいさん» 確かに( ^_^ ;) (2020年10月25日 23時) (レス) id: c8ab14084f (このIDを非表示/違反報告)
- あいさん» w (2020年6月28日 15時) (レス) id: f0c80c11c2 (このIDを非表示/違反報告)
あい - なんか、鬼滅絡める必要ある? (2020年6月20日 15時) (レス) id: 9ae16e851a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soleil | 作成日時:2019年9月25日 22時