そんなに私が嫌いですか【鬼滅の刃】 (ページ28)

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二十六ページ28

｢藤の花の毒を…身体中に回す？｣

｢嗚呼、そうだ。
もしもの時の為に、やっているんだ｣

少女から父親の口から聞いた言葉は、思いがけないものだった。
鬼は藤の花を嫌う、というのは、元鬼殺隊である父親から聞かされていた為、少女も知っていた。

｢…それも、俺達がやっているのはただ毒を回すだけではないんだ｣

｢………？｣

｢俺達は稀血だ、しかも、稀血の中の稀血。
鬼にとっては最高級のご馳走、ってところだ。
そこで、身体の一部…例えば、右腕を鬼に喰われたとしよう。

普通なら、鬼の体内に取り込まれた右腕のみの毒が、鬼の身体に回る。
だが右腕のみの毒の量では、鬼の致死量には全くもって及ばない。
そこで、俺達の祖先は研究に研究を重ねて

切断された身体にも、本体との精神を繋ぐことに成功したんだ｣

少女の頭は、父親の言葉を上手く理解出来なかった。
少女は素直に、首を傾げる。

｢…簡単に言うとね、例え右腕が切られたとしても、その右腕は身体と見えない糸で繋がっている、ということよ｣

横にいた母親は、少女に分かりやすいように説明し直した。

｢そんなことが出来るの？｣

｢嗚呼。そしてその鬼の体内にある右腕に、全身分の毒を送り込むことが出来る。

…だがこれには一つだけ欠点があってな。
切断された身体の一部に全身分の毒を送り込み、鬼の身体に毒を回らせるには、少々時間が掛かるんだ。

この方法を使用して鬼を倒すには"事前に鬼の体内に自身の体の一部を残す"必要がある。
鬼を上手く取引に導く、とかな｣

｢…これをね、Aにもやっていて欲しいの。勿論、こんなこと娘にさせないのが一番だと思うんだけどね。

もしもの時、貴女の大切な人を守る為に｣

｢初めまして、貴女がA？
わぁ…！本当に私と目の色が同じ！
何だか妹が出来たみたいで嬉しいなぁ。
Aちゃんって呼んでもいい？｣

彼女は、分かっていた。言われずとも。
自分は、目の前の少女の身代わりであることを。

だが彼女は、嬉しそうに笑う目の前の少女から目が離せなかった。

私が、この子を守らないと

そう、心に誓って。