二十三 ページ25
「どうしても、行ってしまうのかい」
私の言葉に、その気配は立ち止まる。
「…ええ。私にしか、出来ないことなので」
そう言うと、彼女の足音がこちらに近付いて来る。
「…お館様、両手を出していただけますか?」
私は言われた通りに、彼女に両手を差し出す。
そこに置かれたのは、紙の束__手紙、だろうか。
「私は今から、いきます。
……とても身勝手なお話だということは重々、承知です。柱の皆さんと理恵さんに、この手紙を渡して欲しいのです」
「分かったよ。
……けれど、直接は、言えないのかい?」
私の言葉に、彼女は黙る。
本当に誰よりも強く、優しい子だ。
「言ってしまえば、私が、いきたくなくなってしまうんです。まだ此処にいたいと思ってしまいます。それは、駄目なので。
……私がいかないと、誰かが命を落としてしまいます。
もう少し、早くいくべきでした」
そう言って彼女は、身を翻していってしまう。
「お館様、今まで本当にお世話になりました。
最後まで身勝手な藤柱を、どうかお許しください」
遠ざかっていく足音に、最後に声を掛ける。
「……生きて、帰っておいで…A」
「……っ……それは、出来ません」
その言葉を最後に、彼女の足音は小さくなっていく。
嗚呼、A。
かわいいかわいい、私の子。
辛かっただろう、苦しかっただろう。
他の皆ならきっと、耐えられないだろう。
A、君は本当に、優しい子だ。
嗚呼、けれどもAは今日
逝ってしまうのだろう。
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rin - めっちゃ泣いた...... (2023年5月3日 19時) (レス) @page38 id: c3282cfa2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 素敵な作品をありがとうございました! (2022年1月4日 19時) (レス) id: 2a1788ef2b (このIDを非表示/違反報告)
Soleil(プロフ) - あいさん» 確かに( ^_^ ;) (2020年10月25日 23時) (レス) id: c8ab14084f (このIDを非表示/違反報告)
- あいさん» w (2020年6月28日 15時) (レス) id: f0c80c11c2 (このIDを非表示/違反報告)
あい - なんか、鬼滅絡める必要ある? (2020年6月20日 15時) (レス) id: 9ae16e851a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Soleil | 作成日時:2019年9月25日 22時