そんなに私が嫌いですか【鬼滅の刃】 (ページ23)

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二十一ページ23

頭が、上手く働かない。
話に、脳が追いついていないからだ。

胸が酷く締め付けられたような感覚であった。
話を、聞いているだけだというのに。

｢これが、"A"の全てです。
赤の他人であるというのに顔が同じであったり…最終選別を二度突破している理由は、お分かりいただけたでしょうか？｣

Aは話の途中で、大粒の涙を流し始めた。
無理もない、自分の顔を、整形手術によって変えられたのだ。
それだけではない。辛い過去のことまで、思い出させてしまった。
今直ぐにでも、彼女を抱き締めたくてならなかった。

そんな資格、俺にはないと言うのに。

その後、地下牢を後にした俺達は理恵を連れて、直ぐに柱合会議が開かれた。
だがAの話で頭が上手く回っていないのか、誰一人として口を開こうとしなかった。

｢顔を変えられたって……いくら何でも辛すぎるよね｣

沈黙を破ったのは、時透であった。
それに続き、他のは柱も口を開き始める。

｢だってあの時、Aちゃんはまだ十代だったんですよね…女の子には更に辛すぎると思います…｣

｢……………｣

｢派手に驚いた…｣

｢あんな小せぇ背中で、何てもん背負ってんだよ｣

｢…嗚呼、何と可哀想な…｣

｢……俺は、Aがやったとは最初から思っていなかった｣

俺の言葉に、その場にいる全員の視線が集まる。

｢だがそれは、ただの言い訳にしかならない。
俺はそう思っていながらも、何もしなかった。
……だから俺は、俺のやるべきことをしようと思う｣

冨岡さんはそう言って立ち上がり、無言で理恵さんの腕を掴んで出て行った。
きっと、あの少年の家族の元へ連れていくんだろう。

｢…お館様、理恵さんの処分は…？｣

胡蝶さんの声は震えていた。

｢鬼殺隊から、辞めさせるよ｣

｢それだけ…ですか？｣

｢そうだよ。Aは優しい子だ、それ以上の罰を望んていると、私は思えない｣

｢…………！｣

そう、そうなんだ。
優しい、Aは優しい。
無口で無表情じゃなくて、泣き出してしまうからという理由で僕達に見せた、あの表情こそが、本来のAなんだ。
笑顔の耐えない、優しい存在。

けれど再び赴いた先で目にした光景は

泣き崩れる光子の姿と、Aの消えた地下牢だった。