好きでした ページ6
本気で好きでした。
努力して努力して可愛くなって、告白を受け入れられた時本気で嬉しかったんです。
彼は2年生の時に同じクラスでした。クラスでも目立つタイプで苦手だという人もいたけど、何気なく優しい所に気がついたあの日、大好きになりました。
でも私は彼と付き合えるほど可愛くないし、何より全然会話をしたことがありませんでした。
1年間、努力しました。なんせ本気で好きだったので。
メイクを勉強して制服改造して、彼が好きなアーティストをひたすら聞いて、ちょっと校則破ったりなんかもしました。
恋とはすごいものでこの1年で容姿はもちろん、交友関係や人格まですっかり変わってしまいました。満足でした。
変わった自分で彼に告白し成功して、今までの努力が報われて夢のようでした。もうこれ以上の幸せはないと。
休日はデートをして、撮った写真をSNSにアップして、ちょっとイチャイチャしたりして。
見た目も人格も変わったけれど、お付き合いをするのは初めてでなかなかに舞い上がっていました。
彼が私のことを本当は好きじゃないことに気がついたのは付き合い始めて数ヶ月経った時です。
3年生になって告白した私は、彼とは別のクラスでした。
一緒に帰ろうと迎えに行った時、廊下から教室を見つめて一筋涙を流す彼を見ました。泣いていることには気がついていないようで、視線の先には補習を受けている女子生徒がいました。
彼を見ただけで、何も彼には聞きませんでした。聞くまでもありませんでした。
あんな目、すぐ好きなのバレちゃうよ。
気づいてないふりして声をかけました。
手を引きました。
ホテルに行きました。
なんとか引き止めたくてとんでもないことしました。
痛いだけでした。
彼は最中泣いて、私の目を見ながら好きだよとどこかの誰かに言いました。
体の熱と共に急激に心が冷たくなって悲しくなって、あんなにも恋焦がれた彼に自分から別れを告げました。
あんなに大好きだったのに、なんで気がつかなかったんだろう。
彼のあの子を見つめる視線は、彼を思っていた私の視線に似ていて、彼が見つめていた女子生徒は、かつての変わる前の私に似ていました。
なんで気がつかなかったんだろう。
自分を潰しても、好きになってもらうことはできませんでした。
SNSのアイコンを塗りつぶしながら、涙でメイクも崩れました。
でもやっと気がつきました。
大好きな彼のために努力して、可愛くなって、彼と付き合っている自分が一番好きでした。
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作者名:華河千咲 | 作成日時:2020年6月15日 23時