自己満短編 (ページ1)

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珈琲を淹れるページ1

ミルを引いている時、私はほっとした気持ちになる。

レギュラーコーヒーを淹れることが私の最近の趣味だ。インスタントよりも香りがよく、両親からも好評である。

珈琲を淹れる時間が私は好きだ。

飽き性な私だが、高校を卒業してから毎日大学生になった今でも淹れ続けている。
下宿した今も毎朝自分で淹れたレギュラーコーヒーを飲んでから学校に行くことがもはや日課になっていた。

そのせいかここ最近はよく寝付けない。夜中にいつも目が覚めて、朝までそのままなんてこともある。

母に電話をした時少し飲むのをやめたらと言われたが、やめる気は無い。
カフェイン中毒である訳でも無い。
言ってしまえば、別段珈琲が好きな訳でもない。

珈琲といえば何を思い浮かべるだろう。

私は職員室を思い出す。
職員室の香り。

先生の香りだ。
思いを伝えられなかった、あの先生の。

放課後補習に付き合ってくれた先生のシャツに残る香り。
文化祭の準備で夜まで残った時の差し入れ。

薬指の輝きを見つけた時。あの時の胸の痛みにも珈琲の香りは似ている。

その痛みすら今では愛おしい。だんだん薄くなるあの日の思い出を、反芻するように毎日毎日珈琲を淹れる。

苦いそれが身に染みるようにゆっくりゆっくり飲み込む。

今日も私はひとりミルを引く。豆から思い出が弾けていく。
いつもはほっとするのに、なぜか今日は鼻の奥がツンと痛くなった。