傲慢 ページ6
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「それからこの種目やりたい人〜」
体育祭の種目決めというのは、基本的に上手くいかないものだと私は思っている。勿論人それぞれやりたい種目とやりたくない種目、得意な種目とそうじゃない種目 あるだろう。
体育委員の男の子は困ったように名前の足りていない欄を見つめた。
「ここ決めないとさ、他の種目も決まらないんよ」
“クラス対抗リレー”
同学年のクラスでそれぞれメンバーが選出されるクラス対抗リレー。クラスの大多数から選出される玉入れやら二人三脚やら綱引きよりも、責任が重く 人数も少ない。である故にこういう種目は何よりも先に決めることが普通なのだろう。
が、誰もやりたがらない為 こうして長い時間がかかってしまっているのである。体力テストの速い順でもいいから決めてしまえば逆らえないというのに。
「陸上部で出てくれる人はもう出てるし頼むよ〜運動部、誰でもいいから」
「お願い〜〜」
「ここ決まらへんと次進めんしさ〜、頼む〜」
「なあA、やったら?」
隣の席の侑は頬杖をついて 面倒くさそうな顔だけを此方に向ける。
『えぇ…もう暫く走ってへんし流石に無理だよ』
「俺もやるからええやん!こいつこいつ!こいつやるから名前書いといて!」
「お まじ!Aちゃんやってくれるん!?あと一枠やねん〜」
わざわざ私の席まで来て「お願いします!」だなんて手を合わせられて、皆の視線はすっかり私の方へ向いてるし、ほんと最悪
『うん、まぁ、ええよ』
「ほんまー!ありがとう、ほんまにありがとう〜」
ほっとした様子で元の位置へ戻って行く女子の体育委員さん。少し落ち着いてから隣の席である侑を睨むと、すまんすまん と言った様子で片手を上げた。
絶対後でアイス買ってもらう。ちょっと高いから我慢してたあのめっちゃ美味しそうなコンビニのアイス。
「でもまぁ、丁度ええやん。たまにはこういうの」
『こういうのって何?侑のわがままにはもう沢山付き合ってあげとると思うけど』
「すまんかったって!ほんまにごめんて!」
『帰りにアイスね』
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作者名:夜永 | 作成日時:2020年4月4日 20時