出会い2 ページ4
妹を抱えて家を飛び出した。
(とにかくここから離れないと…)
遠くへ、出来るだけ遠くへ
何度も足がもつれそうになっては
生前の父と母の笑顔が頭を過り、それと同時に思い出されるあの凄惨な光景が自身を奮い立たせた。
「姉ちゃんっ怖いよ…」
何かを察した妹の体が震えている。
私が守ってやらねばならないと力一杯走った。
________が、所詮は怪物と人。
力の差は歴然であった。
「ちょこまかと、逃げるんじゃぁねぇよ!!!」
怪物の鋭い爪が私の背中を抉った。
その衝撃で地面に倒れ込み、山の傾斜によりおよそ二、三メートルほど妹もろとも転がり落ちた。
「菊…!」
妹は、妹は無事か。
背中に走る痛みなど、最早どうでもよかった。
「姉ちゃん…姉ちゃん…」
妹は無事だった。
「うぅ…っ」
己の力を振り絞り、妹の方へと近づいていく。
自分の着物に血が滲んでいくのが分かった。
妹にようやく手が届くというところで
ズシンっ
と何かが背中へのしかかった。
「なぁに、逃げようとしてんだよ。無駄な足掻きは辞めておけよ、すぐにあの世で合わせてやるからよォ。クククっ」
そのおぞましい笑い声が、恐怖より憎しみを膨れ上がらせた。
「お前なんかに…菊は殺させない…化け物…この外道が…」
声を絞り出した。
「殺させないだと…?お前、この状況でまだそんなことを言うのか。…ならお前の妹を先に殺してやろう。子供はうまいからなぁ…」
足の重りが無くなった。
「姉ちゃん…姉ちゃん…怖いよ…」
(逃げて…お願い…)
先程の衝撃で上手く声が出せなかった。
動かなければ、守らなければ。
頭ではわかっているが、体が言う事を聞かない。
「妹に詫びておけ、お前の非力がこいつを殺すんだからなぁ」
ドスッ
鈍い音と共に菊の叫び声が山中に響き渡った。
「菊っっ!!!」
怪物の手は妹の横腹を貫いていた。
「いやぁあ!痛い…姉ちゃん…お母ちゃん…お父ちゃん…痛いよぅ…」
「お前っ…お前っ…!!!」
妹の泣き叫ぶ声と、痛みに歪む顔に最後の力を振り絞った。
背中が焼けるように熱い、全身が軋む。
それすらを凌駕するほどに憎しみは膨れ上がり私を動かす動力となっていた。
転がっていた木の枝を握りしめ、思い切り怪物の目へと突き刺した。
「グッ…」
怪物が怯んだ瞬間、妹を抱き抱え走った。
「菊っ…!頑張って…すぐ助けてあげるからね…!」
妹は返事を返すことが出来ないくらい衰弱していた。
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作者名:ヨム | 作成日時:2020年10月21日 0時