出会い1 ページ3
必死に走っていた。
死に物狂いで、ただただ走っていた。
「はっ…はぁ…っ」
「菊っ…!頑張って…すぐ助けてあげるからね…!」
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ーーー
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幼い頃、環境に恵まれ育った私は何不自由なく暮らしていた。
優しい父と母に、かわいい妹。
特別裕福というわけではなかったが、特別貧乏というわけでもない。
何もない毎日、いつも通りの毎日
それだけでよかった。
幸せだった。
ーーーー鬼が、来るまでは。
幸せとはいとも簡単に奪い去られる。
積み上げるのには時間がかかるのに、崩れ落ちるのは一瞬だ。
ある晩のこと
いつものように、父は囲炉裏の前に座り母は夕飯の準備をし妹と私は薪を運ぶため近くの小屋へ歩いて向かっていた。
牧を両手に抱え家へ帰る途中、その異変に気づいた。
顔がひりつく。嫌な予感だ…。
昔から何かが起こる予兆のように顔に痛みが走る時がある。昔、人さらいに攫われかけた時に負ったこの頬の火傷のせいなのか…
薪を足元に落として、早足で家の方へ向かう。
(お願い…何も起きないで…)
妹を木陰に隠して恐る恐る家の戸を開けた。
すると、目の前の光景に衝撃が走った。
「何…これ…」
父と母が無惨な姿で死んでいた。
血まみれの部屋に母が用意したのだろう、夕飯だったものが何か肉片のようなものと共に転がっていた。
私はその場で立ちつくし声も出なかった。
暫くして背後から声がした。
「姉ちゃん…?」
妹の声だった。
「見ちゃダメ!」
私は妹を抱きしめた。
涙が止まらなかった。
「姉ちゃん?どうしたの…?」
「大丈夫、大丈夫だから…」
妹にみせてはならない、こんなものは見せては行けない。ただただ、必死に抱きしめていた。
暫くすると家の奥から声がした。
「人間だ…人間の匂い…」
暗がりの中から出てきた声の主は、嫌に怪奇で醜悪な姿をしていた。
“こいつが父と母を殺した“
まっさきにそう感じた。
それと同時に“逃げなければ“と、理解不能な状況を前に震える足を動かした。
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なかなか煉獄さん出てきません…
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作者名:ヨム | 作成日時:2020年10月21日 0時