私のブラック本丸更生日記 (ページ40)

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『！』

微かに声が聞こえ始めた。恐らく前田が抵抗しているんだ。

「うる..え！！」

ドッガシャン！

前方から大きな物音が聞こえ、私の前を先行していたヒトガタの背面が赤く滲み出した。

審神者が霊力を使ってヒトガタを使役する例は多々ある。
ただただ己の霊力を込めれば、ヒトガタは審神者の”身代わり“や“依代”となる。結界を張る際の補助に使ったり、霊力をストックしたり、時には襲撃時の影武者の役割を果たす。
では今暁月が行っている術は？
口上と共に刀剣男士の名を呼ぶと、審神者が持つ男士の“縁”が一部乗り移り、”身代わり“、”憑代“となる。そして審神者の諱を持って命ずる事で、男士の“縁”を辿って居場所を特定する事も可能である

『(見つけた！！....っ！！)』

路地裏を駆け回り、漸く見つけた人攫いらしき中年の男、そしてそいつに腕を引っ張られる背中に血が滲んでいる前田。壁の側にあるゴミ箱は倒れ、先程の物音の正体が分かった。抵抗する前田に痺れを切らして叩きつけたのだろう。前田はぐったりとしている

『っ！！おのれぇ！！！！』

気付けば刀を抜いて駆け出していた。

『貴様...！！叩っ斬ってやる！！！』

大きく飛び上がって振りかぶり、男めがけて振り下ろす

前田「あ、...主君！？」

『よくも私の子に怪我を負わせてくれたな.....ブチ殺す！！！』

「ひ、ひいいいいいい！！なんだお前え！？」

無我夢中で刀を振り回し、そこら中に亀裂が入る

柘榴「いたいた....ってやべえ！！長義！！」

長義「ああ！」

ガキィン！！

男に振り下ろした刀身は、割って入って来た長義さんによって防がれた

『退け！！邪魔をするな！！！』

長義「少しは落ち着いたらどうだい？ここで男を殺せば、君は本丸運営所じゃないだろう。(なんて力だ。本当に未成年の少女か？まるで大太刀を相手している様だ)」

『私の子に手を出した！この子がどんな扱いを受けて来たかは互いに知らないが、それでも私は許せない！！今ここで！！』

長義「その子が怯えているよ？」

途端に、頭を支配していた黒い澱みがサーッと引いていった

前田「主君！もうお辞め下さい！犯人は柘榴さんによって捕まっています！」

ドッと腰に衝撃があり、前田に抱き締められたのだと分かった。男の方を見ると、泡を吹いて気絶し、柘榴さんに縄で捕縛されていた