戦う決意 ページ48
少し深呼吸して、葛葉にもらった合鍵で扉を開く。玄関をくぐると、待ってましたと言わんばかりに葛葉が立っていた。
葛葉「よっす」
「連絡返さなくてごめんね。ちょっと心の整理してた」
葛葉「…いいけど。俺そんな頼りない?」
「そういうわけじゃないんだけど…」
できるだけ、葛葉に頼りたくなかった。葛葉はどこまでも私を甘やかしてくれるから、自分が駄目になってしまうような気がして。
それに、葛葉と対等になるために頑張っていたはずが、ライバーになったことすら後悔しかけてたなんて言えない。
「とりあえずマネージャーと法務部に相談したうえで、私から直々に警告ポストすることになった。頑張って、ちょっと強めに言う」
葛葉「コラボしませんって?」
「うーん、その言い方だと角が立ちそうだな。人見知りだからコラボには慎重なので、初対面の人から突然連絡もらっても対応できません。あと私の友人に迷惑かける人は論外ですって伝えるつもり」
前回はとにかくパニックになって「しばらく誰ともコラボしません」と言い放ってしまったが、なにも私が友人達とのコラボを控える必要はない。せっかく世界を広げようと努力してきたのに、その全てを水泡に帰す真似はしたくない。
葛葉は「ふーん」と軽い返事をしながら、私をソファに導いて座らせる。
葛葉「そんで?」
「へ?」
葛葉「椎名の前では泣いて、俺の前では強がんの?」
「強がってるっていうか…もうこの件では泣かないって決めたの」
私がウジウジしていたせいで、唯華を泣かせてしまった。私のなかで唯華の存在は絶対だから、もう二度とあんなことがあってはならない。
葛葉は「あ、そ」と素っ気なく溢しながら私の隣に座る。私はなんとなく居心地が悪くて、「ごめんね」と何に対してでもなく告げた。
葛葉「まぁ、リスナーも味方してくれてるみたいだし、俺らもちゃんとわかってるから。大丈夫だろ」
「うん、ありがとう」
葛葉の肩に凭れかかる。最近はまた生き霊が押し寄せてきて眠れてなかったせいか、目蓋が酷く重く感じる。
葛葉「寝られそうなら寝とけ。ベッドいくか?」
「んー…」
葛葉「言っとくけど俺運べないからな」
「わかってるよ、かりんちょりん」
葛葉「てめぇ…」
軽口を飛ばしながら、葛葉の手をそっと握る。眠くて体温が上がってるせいもあるが、葛葉の手はいつも通り冷たい。吸血鬼だからだろうか。
暖房で温められた部屋で、ひんやりとした手はどこか心地よかった。
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よもぎもち(プロフ) - めめさん» ありがとうございます!大変モチベーションになります!!続きも頑張りますね! (2月12日 18時) (レス) id: c260269ddb (このIDを非表示/違反報告)
めめ - めっちゃ好きですこの話!!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2月12日 17時) (レス) id: a85ab24ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よもぎもち | 作成日時:2023年11月13日 19時