検索窓
今日:360 hit、昨日:812 hit、合計:222,617 hit

駆け引き ページ45

配信を終え、コーサカとの通話も切り、電源を切ったパソコンをしばし眺める。コラボ自体は成功だと思う。コーサカに麻雀の基本は詰め込んでもらえたし、リスナー達も楽しそうにしてくれていた。

問題はここからだ。
かつてのように、変なのが湧いてこないといいけど。

「疲れた…」

思わず口から漏れた言葉に苦笑する。大会に出るって決めたとき、コラボを増やすって決めたとき、今の自分から脱却したいと思ったんじゃないか。

葛葉に相応しい人間になるために。

頑張らなきゃな、と決意を新たにリビングに向かう。葛葉を随分と待たせてしまった。もう寝ちゃったかな、なんて思いながら扉を開くと、ソファで横になってスマホを弄っていた葛葉が起き上がって両手を広げた。

足は自然と駆け足になって、気づいたら葛葉の腕のなかに飛び込んでいた。

葛葉「おつかれ」

「疲れた…でも楽しかった…でも不安…頭の中もう、ぐちゃぐちゃ」

葛葉「うん」

安堵からなのか不安からなのか、瞳からはポロポロと涙が溢れる。そんな私の頭を、葛葉は優しく撫でてくれた。葛葉を抱き締める腕に力が入る。

「葛葉、今日一緒に寝よ」

葛葉「俺なにもしない自信ないけど」

「なにしてもいいから、一緒にいて」

私の言葉に、頭を撫でていた葛葉の手が止まる。

葛葉「おま…それ意味わかってる?」

「うん、今日は噛みついても血吸ってもいいよ」

私がそう返しながら葛葉の胸にグリグリと頭を擦りつける。葛葉は盛大に溜め息を吐きながら私の肩を掴み、私を引き剥がすとしっかり目を合わせるような姿勢になり、眉を潜めた。

葛葉「お前さぁ」

「うん」

葛葉「吸血鬼うんぬん以前に、俺がお前の恋人だってわかってる?」

「わかってるよ」

葛葉「いーや、わかってないね。わかってたら、俺が何かするって言った時そんな発想にならねぇもん」

葛葉の言葉に、今度は私が眉をしかめた。

「葛葉こそわかってない」

葛葉「なにが」

葛葉の不満げな声を無視して、再び葛葉に抱きつく。葛葉はまだ話は終わってないとばかりに「おい」と呼び掛けてくるが、私は抱き締める腕を緩めない。

「私が本当はわかってて言ってるって、わかってよ」

葛葉「は?」

「…わかってて、何してもいいって言ってるの」

しばしの沈黙。
反応のない葛葉に不安になり、少しだけ腕を緩めて葛葉の顔を見上げると、そこには茹でダコのように顔を赤くした情けない吸血鬼がいた。

悪夢の再来→←かつての私



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (176 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
909人がお気に入り
設定タグ:2j3j , njsj , kzh
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

よもぎもち(プロフ) - めめさん» ありがとうございます!大変モチベーションになります!!続きも頑張りますね! (2月12日 18時) (レス) id: c260269ddb (このIDを非表示/違反報告)
めめ - めっちゃ好きですこの話!!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2月12日 17時) (レス) id: a85ab24ed5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:よもぎもち | 作成日時:2023年11月13日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。