エイプリール・イブ ページ35
3月31日。私が1年で一番憂鬱な日だ。
はぁ、と溜め息を一つ吐いて明日に向けての準備をする。
用意するのはレターセット。
宛先は「4月1日を迎えた私へ」
4月1日、エイプリルフール。毎年この日を迎えると、このバーチャル世界は膨大なバグを起こす。ある人は性別が変わり、ある人は年齢が変わり、ある人は種族が変わり。毎年ドタバタと盛大なお祭り騒ぎだ。
かくいう私はというと、毎年この日を迎える度に
彼女は、唯華に出会わなかった私。
彼女は、配信者にはならなかった私。
彼女は、もう高校生ではない私。
唯華の助けも葛葉の支えもないまま、この厄介な体質を自分1人で抱え込んで、誰のことも信用できないまま、大人になった哀れな私。
例年通りなら0時を迎えると同時に元の私に戻るため、「安否確認および記録のために配信もしくはツイートを必ずすること」「できるだけ家から出ないこと」の2点だけ指示するのだが、今年はそうもいかない。
何故なら、同じ屋根の下に葛葉がいるのだ。
葛葉と「別世界の私」が遭遇することが想像つかない。恐らく葛葉もエイプリルフールは忙しいだろうから、ほぼ入れ違いになるだろうとは思うけど。
私も配信アーカイブでしか「別世界の私」を知らないから何とも言えないが、多分、葛葉と「別世界の私」は相性が悪いと思う。なんというか、性格的に。
書き出しを少し悩んでから、意を決して筆を進め始めた。手紙なんて普段は書かないため、毎年どういう文にしていいか困る。
しばらく便箋とにらめっこしていると、控えめなノックが部屋の扉を叩く。顔を上げて「はーい？」と呼び掛けると、赤い目をキョロキョロと動かしながら落ち着かない様子の葛葉が部屋に入ってきた。
「どうしたの？」
葛葉「いや…明日って俺どうすりゃいい？」
「んー、放っといて構わないよ？」
葛葉「でも、明日のお前もお前だろ」
葛葉の言葉に目を丸くする。
そうか、葛葉はそう捉えるのか。
「私の持論だけど、人をその人と定義付ける1番大切なものって記憶だと思うんだよね。あの世界の私には唯華と過ごした記憶も、葛葉を好きになった記憶もない。ひょんなことで別の誰かに惹かれる可能性だってある。なら、魂が同じでも別人だよ」
私がそう結論付けると、葛葉はなんとも言えない顔をした。
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よもぎもち(プロフ) - うたねのどあさん» ありがとうございます！夢主を気に入ってくださって嬉しいです…！ご期待に沿えるよう、更新がんばりますね！ (3月3日 23時) (
レス) id: c260269ddb (このIDを非表示/違反報告)
うたねのどあ(プロフ) - とても好みな作品です…！！夢主の性格や心情などの設定も好みですし物語の展開もとても気になります！！更新頑張ってください！！応援してますね！！ (3月3日 23時) (レス) @page17 id: d12e45b1fd (このIDを非表示/違反報告)
よもぎもち(プロフ) - あめさん» ありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです！モチベーションになります！！ (2月29日 21時) (レス) id: c260269ddb (このIDを非表示/違反報告)
あめ - この作品めっちゃ好きです！！更新頑張ってください！！応援してます！！ (2月29日 20時) (レス) id: a85ab24ed5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よもぎもち | 作成日時：2024年2月15日 21時
