なぞるように ページ23
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰside イブラヒムｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
そこからはもう、必死だった。
これまで会えなかった穴をどうにか埋めようと、縮まらない距離をどうにか縮めようと。
だけど。
葛葉「いいから、いい加減に聞けって」
イブ「だから、やだって」
両手で耳を塞ぐも、葛葉は俺の腕を掴んで無理やり下ろさせてきた。
葛葉「お前が真剣なの知ってるから、ちゃんと話したいんだよ」
葛葉の真剣な目に耐えきれず、溜め息を吐いた。
イブ「聞きたくないって。どうせ、A関連でしょ」
葛葉「…！お前…」
イブ「見てればわかるよ」
そうだ。俺はずっと見てきた。葛葉の友人として。Aを想う男として。二人のことを、ずっと。
葛葉「…もうすぐ運営からもライバー向けに公表されるんだけど、婚約して、同棲する」
イブ「待って待って待って？思ってたより先の展開過ぎてさすがにビビったわ」
半ば投げやりに笑いながら「俺の入る隙間なんてなかったわけね」と呟くと、葛葉は「ごめん」と一言。
葛葉「この「ごめん」はアレね。黙っててごめんの意味ね」
イブ「譲ってくれんのかと思ったわ」
葛葉「んなわけ」
思ったよりちゃんと笑えてる自分に、自分で少し驚く。相手が葛葉で本当によかった。そう心から思える。
大丈夫、二人を祝福できる。
イブ「…幸せにしてやってね、ホントに」
葛葉「…ッス」
しんみりした空気を壊すように、葛葉のマネージャーが入ってきて「葛葉さん、スタジオ向かうお時間です」と声をかけてくる。
葛葉「んじゃ、俺行くわ」
イブ「いってら」
葛葉が出ていって、休憩室に一人ポツンと取り残される。
ふと、隣のソファーに目をやる。初めてあったとき、ここでAは鼻唄を歌っていた。
思い出の中のAが、あのときと同じように優しく笑いかけてくる。
あのときから、ずっと恋い焦がれていた。
魂を吸いとられたかのように。
ずっと執着していた。
ずっと追い求めていた。
頭の中で流れる、小鳥のような歌声で奏でられたデタラメなフレーズを、なぞるように口ずさんでみる。
イブ「…やっぱ俺、歌は無理だなー…」
あの歌声を。
あの微笑みを。
俺は一生、忘れることはないだろう。
少しだけ熱くなる目頭には気付かないふりをして、
俺はその場をあとにした。
さぁ、今日も配信だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 744人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
よもぎもち(プロフ) - うたねのどあさん» ありがとうございます！夢主を気に入ってくださって嬉しいです…！ご期待に沿えるよう、更新がんばりますね！ (3月3日 23時) (
レス) id: c260269ddb (このIDを非表示/違反報告)
うたねのどあ(プロフ) - とても好みな作品です…！！夢主の性格や心情などの設定も好みですし物語の展開もとても気になります！！更新頑張ってください！！応援してますね！！ (3月3日 23時) (レス) @page17 id: d12e45b1fd (このIDを非表示/違反報告)
よもぎもち(プロフ) - あめさん» ありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです！モチベーションになります！！ (2月29日 21時) (レス) id: c260269ddb (このIDを非表示/違反報告)
あめ - この作品めっちゃ好きです！！更新頑張ってください！！応援してます！！ (2月29日 20時) (レス) id: a85ab24ed5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よもぎもち | 作成日時：2024年2月15日 21時
