折衷案 ページ20
翌日。まだ朝早い時間に葛葉はやってきた。昨日のことを若干引き摺ってるのか、気まずそうに「…おはよ」と目を反らしながら挨拶してくる。
「来ないかと思った」
葛葉「なんでだよ」
「気まずいの苦手でしょ？」
もう少しほとぼりがさめてから来ると思った。そう言うと、葛葉は拗ねたように「別に気まずくねぇし」と口を尖らせる。
「昨日はごめんね。ちょっと私、ワガママだったかも」
葛葉「いや…俺も怒鳴ったのは悪かった…と、思う」
歯切れの悪そうな感じで謝ってくるあたり、やっぱり折れる気はないんだろうな。
「あのね、私、色々考えたの」
葛葉「…うん」
「一緒に暮らそう。今の私じゃ、皆に迷惑がかかるから」
葛葉の顔がパアッと明るくなる。だけど。
「だけどリスナーには、葛葉と住むって言うことは伝えない。私には恋人がいて、その人と一緒に住むってことだけ伝える」
葛葉「え、なんで。俺って言えばいいじゃん」
「それは何度も考えたけど、だめ。私のプライドを抜きにしても、絶対だめ」
頑として首を横に振る。マネージャーに聞いたところ、先日の件で叶くんに脅迫じみた内容の手紙が届いたらしい。イブくんやコーサカが言っていたが、コラボするだけでもアンチコメがつく状態だ。ただでさえユニットを組もうとしている葛葉がどんな目に遭うかわからないのに、同棲だとか婚約だとか、とてもじゃないが言えない。
「私にも葛葉を守らせて」
葛葉のファンから私にくる批判は、甘んじて受け入れる気でいる。でも逆はだめだ。だってそれは、本気の好意からくるものじゃなくて、私の体質に浮かされた人の暴走だから。
「せっかく運営さんに許可もらったし、ライバーさんには公表しよう？色々協力してもらう必要もあるかもだし」
葛葉は私の目をじっと見つめたあと、溜め息を吐きながら肩を落とす。
葛葉「お前、こういうとき折れないからなぁ」
「お互い様でしょ。だから、これが折衷案」
葛葉は私の頬をそっと撫でると、優しく微笑んだ。
葛葉「お前が退院するまでに環境整えとくから」
「寝室にドレッサー置きたい。あとあの余ってる部屋、配信部屋にするからちょうだい」
葛葉「はいはい。そういう環境整備もね、おいおいね」
他になんの環境整備があるんだろう。首を傾げると、葛葉は眉を下げたまま笑った。
葛葉「お前はとりあえず、身体直すことに専念しとけ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 744人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
よもぎもち(プロフ) - うたねのどあさん» ありがとうございます！夢主を気に入ってくださって嬉しいです…！ご期待に沿えるよう、更新がんばりますね！ (3月3日 23時) (
レス) id: c260269ddb (このIDを非表示/違反報告)
うたねのどあ(プロフ) - とても好みな作品です…！！夢主の性格や心情などの設定も好みですし物語の展開もとても気になります！！更新頑張ってください！！応援してますね！！ (3月3日 23時) (レス) @page17 id: d12e45b1fd (このIDを非表示/違反報告)
よもぎもち(プロフ) - あめさん» ありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです！モチベーションになります！！ (2月29日 21時) (レス) id: c260269ddb (このIDを非表示/違反報告)
あめ - この作品めっちゃ好きです！！更新頑張ってください！！応援してます！！ (2月29日 20時) (レス) id: a85ab24ed5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よもぎもち | 作成日時：2024年2月15日 21時
