優等生でいさせて！

俺の「妹」 ページ31

ｰｰｰｰｰｰｰｰside 黛ｰｰｰｰｰｰｰｰ

Aが帰ってこない。
電話にも出ないし、思い付く限りの知人に訊いても誰もAの所在を知らないという。最後に会ったと思われる不破くんと明那曰く、一人で生徒会室に残っていたらしい。

事態を把握した明那と不破くんは、飛び出すように探しに出た。俺は心配する子供達を安心させるのと、入れ違いでAが帰ってくる可能性を考慮して施設に残っている。

Aは、昔から寂しがり屋だった。

中学時代にグレたのも、派手に暴れれば本当の親が名乗り出るかもしれないと思ったからだと後になって聞いた。今では俺達を「家族」、施設を「家」だと呼んで、この場所こそが自分の居場所なのだと繰り返し主張する。

呪文のように。
周りにも自分にも言い聞かせるように。

そんなことを言っても世間からすればAは孤児だし、俺とAは「血の繋がらない異性」だけど。Aはいつか世間ともわかり合えると思っているらしい。その純真さに付け入る人間が、Aを傷付けることがありませんように。俺には願うしかできない。


子供達を寝かしつけて、職員さんとAのことを相談する。中学時代でさえ、ここまで見つからないことはなかった。

警察に連絡するべきだ、という話になったタイミングで、俺のスマホが鳴る。

黛「もしもし」

緑仙「Aの居場所がわかった」

スマホをスピーカーにして職員さんと目配せをした。

緑仙「もう警察に言った？」

黛「まだだけど…緑仙、今どこにいる？」

緑仙「よかった。僕はいいけど加賀美が色々と面倒だからさ。もうちょいだけ待っててくんない」

緑仙がそういうと、ハヤトさんの声で「もうすぐつきます」と声が聞こえる。どうやらハヤトさんの車で移動してるらしい。

緑仙「Aを連れ去ったのは夢追の部下らしい。僕をご指名だって。とりあえず僕と加賀美で行くけど、あとから応援で「VACHSS」も来るように召集かけてもらった」

冷静なようで怒りが滲む緑仙の声。となりのハヤトさんも同じく煮えたぎっているだろうことも容易に想像できるが、「落ち着いて」なんて言葉は出てこなかった。

加賀美「緑仙さん、着きました」

緑仙「はーい。それじゃ、お姫様迎えに行ってくるよ」

黛「緑仙、場所だけでも…」

言いきる前に切られた。「VACHSS」に召集をかけたということは、不破くんも呼ばれているはずだ。真っ青な顔で家を飛び出した不破くんを思い出して、頭を抱えた。

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