山田 洋介の場合。 ページ1
「零さん……あそこに人が寝てる……」
一緒に散歩をしていたルルチアが、少し怯えたように私に言う。人通りが少ない所に、男性と思われる人が、全身に火傷を負って横たわっている。その様子を見たルルチアが私の腕に自分の腕を巻きつけてくる。
近づいて様子を見ると、どうやら不思議な仮面を被っていて顔が見えない。その男性は私たちの存在に気づいたようにぱち、と目を開いた。
「ここ、は……?」
「うーん、大丈夫?じゃ、ないよね。その火傷。どうしたの?」
体を起こそうとした男性に驚いたルルチアがさらに強く自分の腕を巻きつけたのを感じ、大丈夫だよ、と優しく言う。
結局男性は痛みのせいか体を起こすことができず、こちらをちら、と見た。
「え、と……」
視線を空に向けて考えるように目を閉じる。そして、男性は、さっきの状態とは明らかに違う反応を起こした。
いきなり状態が変わったのを見た私たちは、少し恐怖感を覚えて思わず後ずさる。
「え、大丈夫……?」
ルルチアが我慢できなくなったように驚きながら言う。正直私もこれには驚いた。
その男性は、まるで、私の必殺技、「-ERROR」を使った後になるような、悪夢を見て汗をかいたことを感じた朝の目覚めのような____
男性は、体をびくっと震わせて、顔色が悪くなる。
「あー……ごめん、ちょっと、思い出したくないわ……」
「……そっか。わかった。とりあえず、歩けなさそうだから私がおんぶするよ。ほら、乗って」
誰だってトラウマはあるものだ。そう、私だって、ルルチアだって、思い出したくないものはある。こんな能力を持っているのだから。
とりあえず、
ルルチアに手伝ってもらって、どうにか背中に乗ってもらおうと、しゃがんで腰を男性に向ける。
「え、そんな、あかんって……おんぶなんて……」
「動けないんでしょ?しょうがないよ」
「あー……そうやな、おおきに」
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作者名:よもぎまんじゅう | 作成日時:2018年8月18日 23時