《4》It's about. ページ6
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『傷も浅いので、直ぐに治ると思います。今は絶対安静ですが、回復したら刀を振るうことも可能ですかね』
手当てが終わった野月は、よもぎが用意したお茶を飲みながら見解を述べる。山南は自分が少なからず不安に思っていたことに関してピタリと言及されたことに驚きながらも礼を述べ、土方とともに頭を下げた。
「お二人のお陰で、新選組として生きることができます。ありがとうございます」
『いえ、そんな。私達はそんなにお礼を言われるまでのことはしませんよ!』
よもぎどうにかして!とでもいうかのようによもぎの方に視線を向けた野月だが、当のよもぎはけらけらと笑っていた。
『っはは、そうだ…私たちは今仕事を探してるんだが新選組で働かせてもらえないか?』
一通り笑い終わったよもぎは絶対に断れそうだと思いながらもダメ元で提案する。
「それはすまないが…」
土方は「新選組が女人禁制である」という決まりを浮かべながら苦虫を噛み潰したような顔で断る。そんな様子を見た野月は(でしょうね)と思っていた。
『男装すれば其処はなんとかなるだろう?隊士としても医者としても使えるし、お前たちにとっても悪い話ではないと思うんだがな』
にたり、と悪い顔をするよもぎに押され、山南は「まあ、局長に聞いてみる分にはいいのではないでしょうか?」と苦笑しながら土方に言った。
「まあ、そうだな…」
近藤さんのことだからなぁ、と頭を抱えながら土方は山南の提案に承諾した。
『しばらくしたら京に行く予定なので、その時でいいでしょうか?経過観察もしたいですし』
「ではそれまでに話しは纏めておきましょう」
「世話になったな。何かあったらこの部屋に来てくれ」
そう言った土方から渡されたのは、土方らの部屋の番号が書いてある紙であった。
何度か礼を言った後、二人はよもぎらの部屋から退出した。
しばらくするとよもぎが『さて、西の頭領に挨拶でも行くか?』と、先刻の騒動時に浮かべていたような狂気的な笑顔を浮かべている。
『え』
『嘘だ。真に受けるな』
わざわざ会いに行きたくもない…と呟いたよもぎは押し入れから布団を取り出してテキパキと敷いていった。
『んじゃそろそろ寝るか』
『んー、そうだね。でもしばらくどうしよう』
『ま、ここら辺をぶらぶらと?』
『アバウトだね〜』
そして二人はどちらともなく「おやすみ」と言って眠りについたのであった。
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作者名:柏よもぎ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2022年8月13日 9時