烏よ、再び 番外編【ハイキュー！！】

椎名の風邪　あゆさんリクエスト ページ8

｢何、お前風邪引いてんの？｣



　Aの隣の席の男子が訝しげに言った。



　マスクをしたAが辛そうに喉の調子を整えた。



『ん゛、そう。移したらごめんなー』



　そうおどけて言うAから、サッカー部のレギュラーだという彼が距離を取った。



　何でも近々大きな大会があるので、どうしても移して欲しくないらしい。



｢やめろよお前！ いつから風邪引いてんだコンチクショウ！｣



　田中風に叫ぶ彼はAの事を心配しているらしい。



　……距離は遠いが。



『えーっと゛、金曜の夜から。今日は微熱だけー』



｢今日４日目かよ。んで？ 調子はいかがです？｣



『最悪』



　体調を窺う言葉にAが即答する。



　隣の席の彼は苦笑いして、学ランのポケットからのど飴を取り出した。



　ポンとその飴をAの机に置く。



｢ほらよ。声が聞くに堪えないレベルのAさんに｣



『そりゃどーも』



　二人は顔を見合わせてニヤリと笑う。



　──事件が起こったのは、それから５時間後の事だった。





菅原｢Aーっ！｣



　どうにも熱が上がって来たかなーと思い始めた、昼休み。



　菅原がAのクラスに突撃してきた。



　一部ギョッとしている人も居るが、いつもの事なので綺麗にスルーされている。



『……な゛に、スガ』



菅原｢うわ、声酷でぇ……。お見舞い持って来た！｣



　菅原がニカッと快活に笑う。



　突き出された手には、購買で買ったと思われる品々が入った袋。



　Aが首を傾げた。



『なんで風邪のこと、知ってんの？ 俺、誰にも言ってない』



菅原｢あそこの人から聞いた！｣



　菅原が見つめる方向には今朝話したばかりの隣の席の彼。



　どうやら彼が報告したらしかった。



　少し気まずそうに紙パックのジュースをすすっている。



『ふーん。で、何持って来たの』



菅原｢お前、遠慮ってもんをしろよ。えーと、ゼリーとプリン、それから水｣



　ゼリーとプリン、どっちが良い？ と菅原が小首を傾ける。



『じゃ、プリンで』



菅原｢ちぇー、じゃあ残った方もらうわ｣



『何だよ。ちぇー、って。残念そうにすんな』



　菅原が頬を膨らませてプリンをAの前に置く。



　プリンの甘い匂いが漂って来て──、少しばかり吐き気を促した。





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　次行きます。

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