烏よ、再び 番外編【ハイキュー！！】

稲荷崎への体験入部　蒼鴇さんリクエスト ページ42

『ねー、名前教えてー』



角名｢……角名だけど｣



　なぜかウザ絡みするAをドン引きしたように見つめる角名。



『角名君かぁー。ね、一緒に対人しよ！』



角名｢えええええ……｣



　角名が嫌そうに顔をしかめて監督の方を見る。



　監督はフイッと目を逸らした。



　角名の眉間のシワが更に深まる。



『ほーら早くー』



　Aが穏やかに笑ってボールを持つ。



　角名はその笑みに妙な圧を感じた。



　タイミング良く、治がテテッとAに近づく。



治｢Aさん、俺としましょー｣



『あ、ごめん。また今度ね。今日は角名君を攻略したいからさ』



治｢……こ、攻略？｣



　角名はAのやや物騒な言葉を聞かなかったふりをした。



『はいはい、やろー！』



　角名は観念して首を縦に振った。



　対人というのは二人でレシーブ、トス、スパイクを繰り返すアップの事だ。



　Aがポンと緩いボールを投げる。



　角名がレシーブ、Aがトスを上げる。



角名｢……やっぱ上手いんだね｣



　角名が無表情でスパイクを打つ。



『いやいや！ 角名君がレシーブ上手いからだし！』



　Aはアハハと笑いながら軽くそのスパイクを上げた。



　寸分の狂いもなく角名が構えた手の中にボールが入る。



　その正確さに角名はほんの少し、気持ち悪さを感じた。



　ポンとトスを角名が上げ、今度はAがスパイクを打つ。



　これも十分に威力があるが、やはり角名の腕の中に落ちる。



侑｢うっわ、めっちゃ続きますやん！｣



　侑が笑いながら叫んだ。



　いつの間にか周りは既に対人を終えていた。



『……あ。もう終わろっか』



　Aはそう言って上げられたトスを手でキャッチした。



赤木｢……角名？｣



　対人を終えた角名に何かしらの違和感を感じたのか、赤木が声をかける。



角名｢あいつ、気持ち悪いわ｣



銀島｢……どーゆーこっちゃ｣



　角名がどうにか絞り出した声を掻き消すように、銀島が呟いた。



　角名はそう言われても依然として、Aに視線を固定したままだった。



　そして角名は納得した。





　──ああ、化け物ってそういうことね、と。

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