烏よ、再び 番外編【ハイキュー！！】

もしも椎名がユースに選ばれていたら　蒼鴇さんリクエスト ページ28

佐久早｢じゃあ、お願いします｣



『はいはい』



　心なしか前のめりになっている佐久早に苦笑しながらAが頷く。



　星海がポンとボールを放る。



　ボールを見上げながらその落下地点に入り込む。



『……佐久早君！』



　スパイカーは決まっているのだから、叫ぶ必要は無い。



　が、Aは叫ぶ。



　スパイカーを強く求め、引き付ける声。



　それはスパイカーにとって、最大の誇りである。



佐久早｢っ、｣



　否応なしに全力を引き出される。



　全国３本の指のスパイクが床にたたき付けられた。



　シンッ、と耳鳴りがしてくる程体育館が静まり返る。



　その中に｢わ、今日は調子良いなー｣と古森の呟きが落ちた。



『っ、すっごいね！ さすが全国３本の指』



　Aが佐久早の手を取る。



　佐久早がブンブンと首を横に振った。



佐久早｢Aさんのトスが良かったからです……。ていうか何でも出来るんですね｣



『ありがとー。何でもは出来ないかな。レシーブはちょっと苦手だし』



　アハハ、とAが笑う。



　星海が今度は俺！ と目を輝かせる。



　Aがトスを上げ、星海が打つ。



星海｢凄いッス！｣



　星海が豪快に笑う。



　が、その笑みには尊敬ではない、何か別のものが混ぜ込まれていた。





　──怖い。



　とても怖い、凄く怖い。



　さっき、トスを打って分かってしまった。



　あいつは、人間じゃない。



　まるっきり化け物だ。



　努力で作り上げたものなんて、あっさりと蹴落として行く。



　圧倒的で輝かしい才能の塊。



　……こんな奴に、敵うわけがない。



『星海君、凄いねー。ジャンプがめっちゃ高い』



　ほら、そうやって言う。



　本当に凄いのはあんたの方だ。



　気持ち悪い。



　完成された綺麗な顔も。



　完璧なトスも。



　これ以上ない程高められたスパイクの精度も。



　苦手だと言いながらきっとレシーブも凄いはずだ。



　全く人間味が感じられない。



　感情が分からない。



　何で皆、こんな奴が好きなんだ。



　確かに尊敬は出来る。



　だけど、人間としては好きになれない。



　俺にしたら人間らしく足掻く、汚れきった奴の方がよっぽど良い。



侑｢なぁ、星海君｣



　その時、宮が話しかけて来た。



　あの何かを含んだような笑顔で。

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