烏はもう居ない ソルさんリクエスト ページ23
武田「──A君が、退部しました」
武田が重々しくそう告げた。
その表情は眼鏡に隠れてよく分からない。
え、と誰かが震えた声を絞り出した。
武田が持ってきた荷物の中を探り、一枚の紙を取り出す。
菅原が見たくないとでも言うように顔を背けた。
武田「これを、しっかりと見てください。目を逸らさないで」
──退部届だった。
丁寧に書かれたその退部者の名前は、椎名A。
西谷「なん、で……」
西谷が有り得ないと言うように呟く。
あんなにバレーが好きだった人が、退部するなんて、逃げ出すなんて有り得ない。
武田が辛そうに唇を噛み締めて荷物の中からビニール袋を取り出した。
烏養は腕を組み、ただひたすらに黙っている。
澤村「ユニフォーム……」
真っ黒な烏の色をしたユニフォーム。
その背番号はAの背負ってきた3番で。
澤村の目からボロリと大粒の涙が溢れ出した。
そして床に崩れ落ち、拳を地にたたき付ける。
ダンッ、と思いの篭りすぎた拳の音に部員達が身を震わせる。
澤村「俺にバレー続けようって言ったの、お前じゃんか……っ」
澤村は思い出す。
6月のインターハイが終わった後の事を。
部を後輩に明け渡そうとした澤村を引き止めたのは、他の誰でもないAだった。
ポタポタと透明な雫が床にこぼれ落ちる。
菅原も後輩達を慰める事もせず、ただ涙を流していた。
菅原「──なんで、言わなかったんだよ!」
なんで、なんで、なんでと震えた声でそう叫ぶ菅原。
その菅原の肩を叩き、笑わせる烏は、エースはもう居ない。
体育館の中を部員達が泣き崩れる音だけが木霊す。
武田「……退部届の後ろに、書いてありました」
武田が鼻を啜りながら言った。
すっかり目元の赤くなった部員達が揃ってそちらを見る。
「俺が居なくても、お前らなら出来る。
ちゃんと見てるから。
──だから、飛べ。」
澤村「っ、お前も居ないと勝てないって、言っただろうが……」
その声は、もはや烏には届かない。
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ゆき(プロフ) - てしまいました…。長い長いコメント、申し訳ありません…!これからも応援しています!! (2022年5月27日 22時) (レス) id: ef64ea2517 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 八雲さんリクエストが、凄く好きです…!本編を読ませていただいたのですが、余計に…泣ける…ッッ!!八雲さんのリクエストを書いてくれて、本当にありがとうございます(何処目線って感じですね、すみません)あわよくば、主人公には故障もせずに春高に出て欲しいと思っ (2022年5月27日 22時) (レス) @page7 id: ef64ea2517 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - お疲れ様でした!テスト頑張ります (2019年11月29日 2時) (レス) id: 398e0a716f (このIDを非表示/違反報告)
よもぎ餅のわらび(プロフ) - こころさん» ごめんなさい、リクエストはもう募集してないんです……。すっごく面白そうなリクエストなのですが、申し訳ありません。テスト頑張って下さいね! (2019年11月28日 19時) (レス) id: 3bd3258fc4 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - またまたリクエストです 主人公の幼児化見たいですそれぞれの学校の反応見たいです 私も今日からテスト週間です!頑張ります!! (2019年11月28日 8時) (レス) id: 398e0a716f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よもぎ餅のわらび | 作成日時:2019年10月22日 12時