烏よ、再び５ 青葉城西編

烏の火 ページ23

藤永｢クッソ……。あんのバレー馬鹿め、勝手に出場しよったな｣



　Aの主治医、藤永が２回席で頭を抱える。



　藤永は予約の診察を早々に済ませ、Aの様子を伺うためにこの会場に足を運んだのだった。



　完璧に足を引きずるAの姿に藤永が歯軋りする。



瀬見｢……あれ？ 藤永さん、ですよね？｣



藤永｢ん、藤永です｣



　２回席で試合を観戦していた瀬見が藤永に駆け寄った。



　その後ろからは面倒臭そうに走る白布と、楽しそうに跳びはねる天童が居る。



白布｢えーっと……、どなたですか？｣



　白布が小首を傾けて言う。



　その目はどことなく不躾に藤永を観察していた。



　藤永がその視線に気付いて、ニヤリと笑った。



瀬見｢ウチのOB、セッターの藤永さん。……下の名前は分かんねぇ｣



藤永｢下の名前は分からんくてええわ。よろしくな？ セッター君｣



　藤永が真っ直ぐ白布だけを見て挑発的に言う。



　白布がピクリと頬を引き攣らせた。



天童｢けんじろー、そんなに警戒しなくて大丈夫ダヨー？ この人、挑発するのが好きなただのバレー上手い人だからサ｣



　天童がニコニコ笑いながら跳びはねる。



　白布は更に顔を強張らせる。



　藤永に続き、天童にまで動揺を与えられてしまった白布に、瀬見は心の中で哀れんだ。



藤永｢なんか酷ない？ ディスられてる気ぃしかせんねやけど｣



　藤永が軽く頭を左右に振りながら天童を睨みつけた。



　藤永と天童の間に慌てて割って入った瀬見が、困ったように笑って言う。



瀬見｢……まあまあ。そういえば藤永さん、何でここに？｣



藤永｢ウチの患者が勝手に出場しとるもんで。どうしようかなーと様子見に｣



白布｢患者？｣



　白布が眉をひそめて藤永に問う。



　藤永はハハ、と乾いた笑みを漏らして静かに言った。



藤永｢俺、接骨院しとんねんやけどな？ アイツよ、患者｣



　藤永が不機嫌そうに指を差した先には、A。



　また跳んで、跳んで、跳んで。



　最後の力を振り絞って、まばゆく輝く。



　まるで、死ぬ間際の星。



藤永｢アイツ、ちっとも自分のこと大事にせぇへんねん｣





　──ほんま、アホ。





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　ここまで藤永さんを一度も出してないっていう……。
　藤永さんが分からない人は設定の所をお読みください！

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