烏よ、再び５ 青葉城西編

青葉の均衡 ページ20

入畑｢冷静になりなさい。またコートに出たいなら｣



　静かに告げられた、戦力外通告。



　京谷が眉間にきつくシワを寄せてウォームアップゾーンに戻る。



　京谷の周りにわざとらしい空白が出来た。



　──これが今の、京谷と俺達の心の距離。


　
　ヒクリと震える喉を無理矢理に鎮め、京谷に向かって一歩踏み出す。



矢巾｢さっさと復活しろよ。もう後がないんだから｣



京谷｢……うるせぇ知るか｣



　いつもよりキツめに忠告する。



　無愛想な返事がされるが、生憎とそのくらいで引き下がる程この試合は安くない。



矢巾｢相手の挑発にまんまとノッてアツくなって自滅。くそダサいな｣



京谷｢……あ？｣



　反省の様子もない京谷。



　──何も、本当に何も分かっていない京谷。



　酷く、腹が立った。



　ダァンッと京谷の胸ぐらを掴んで勢いよく壁に押し付ける。



矢巾｢──先輩の晴舞台に泥塗ったら、絶対に許さねぇからな｣



　みっともないくらいに、真っ直ぐに京谷に言葉をぶつける。



　敢えて京谷の心臓に刃を突き立てるように、えぐるように。



　俺はこの試合には出られないかもしれない。



　でも、それでも大嫌いなお前に言ってやるんだ。



　──ちゃんとしろ、点数を稼げと。



　そうすることでしか、先輩を勝たせる事が出来ないから。



　本当に、みっともない。



　しかしそうすることで先輩が勝てるなら、何だっていい。



京谷｢……お前、もっとチャラい奴だと思ってた｣



　京谷が絞り出した声は低く唸るようだった。



矢巾｢コートにいる以上、得点も失点もチームのものだろ。……頼むから、力貸してくれよ｣



　本当なら、チームの勝利を信じるなら祈るべきではない。



　願うべきではない。



　己の手で掴み取るべきだ。



　──が、俺にはそれが出来ない。






　だから、代わりにお前が掴み取って来てくれ。京谷。





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　ああ、やっと矢巾のターン……！
　この話は比較的時間がかかりました。
　本当は京谷視点か迷ったのですが、京谷の口調が難しすぎた……。

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