烏よ、再び５ 青葉城西編

青葉の均衡 ページ19

──タイムアウト。



　恐らくは京谷をクールダウンさせる為の時間。



　それと共に、どことなく漂い始めた嫌な空気の払拭だ。



及川｢イヤー、Aちゃん元気っすなぁ｣



　及川が参ったというように頬をかいた。



　そんな気の抜けた言葉で、京谷の熱くなりすぎた頭を冷やそうとしているのかもしれない。



『足引きずってるし限界は近けぇよ。ただ、気力だけで何とか持たせてるって感じなのかもな』



　スポドリを飲みながら及川に答える。



　隣で岩泉が唸った。



岩泉｢……アイツ、見た目は柔らかそうなのに、中身は男らしいよな｣



　岩泉がどことなく残念そうにどこかを遠く見つめた。



松川｢わお、男前岩泉のお墨付き。すっげー｣



及川｢岩ちゃんは見た目も中身もゴリラだよねー｣



岩泉｢うるせぇクソ川｣


　
　指を差した及川の手を岩泉がペンッ、と払う。



　ここにボールが無いだけマシだな。



　あったら一瞬で頭にぶつけられてんぞ。



　アホだ及川。



　つーかそんな奴に毎回律儀にツッコむ岩泉がすげぇ。



　……さー、京谷の頭は冷えたかな？





及川｢──狂犬ちゃん！｣



　及川がタイムアウト明け一発目を京谷に託す。



　ザンッ、と掠れた音がしてボールがネットに引っ掛かる。



　……ダメだこりゃ。



　京谷ときたら、謝りもしねぇ。



　ピピーッと笛が鳴り、選手交代。



　１３番国見と１６番京谷だ。



　監督が難しい顔をして京谷と言葉を交わす。



　京谷はそのまま不機嫌そうな顔をしてウォームアップゾーンへと向かって行く。



『……早く戻って来いよな、京谷』



　ポツリとコートに言葉が落ちた。

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