泡が9つ ページ21
『っ………はぁ……はぁ…』
涙を流し、尋常じゃない汗をかきながら 勢い良く起き上がる。
未だ乱れた呼吸を正そうと、肩が上下に息をする。
自然と手に力が入り、ベットのシーツをぐしゃりとする。
『……夢か』
あまりにも長い夢だった。思い出したいような、思い出したくなかったような。そんな夢。
僕はどのくらい眠っていたのだろう、確か船が襲撃に合ってそれで＿＿＿＿
嗚呼、だからか さっきから視界が狭いと思ったら、左目が包帯で巻かれている。それに、左耳と左腕も同様。
自由に動かせるのは足と指 くらい。
見えなくなっちゃったのかな…。困るなぁ。
『僕の未来…まだまだこれからなのに………』
誰もいない部屋で、ポツリと呟く。
みんなは今どこにいるんだろう、きっとウタと一緒だろうな。僕が居ても居なくても変わらない事実。
いっその事、僕に対して無関心でいてくれたらこんなにつまらない感情は抱かなくて済んだのに。
『さびしぃなぁ……』
1人が耐えられない。いつからこんなんになってしまったのだろう。今までなら、何も感じずに済んだのに。
『ししょー……会いたいよ……』
会いたいよ。師匠。
＿＿＿
暫く時間が経って、窓から涼しい風が入ってきた。
そろそろ誰かに目が覚めたことを伝えなきゃと思い、慣れない足取りでドアの前にゆっくり進んでいく。
ドアノブを捻り廊下に出れば、遠くから音楽が聞こえてくる。食堂の電気が１つ付いている。
きっと、食堂でご飯を食べながら誰かが歌っているんだ。
まぁそんなの、1人しか考えられないけど。
みんなに気づかれないようゆっくり歩き食堂の壁に寄りかかる。左耳が少し聞き取りづらいが、聞き取れなくはない。
「いいぞ〜！ウタ！もっと歌え〜〜〜！」
「さすがウタだ！」
「かわいすぎる〜！」
上手いこと口車に乗せられたウタは、「いくよ〜！次はねアタシの大好きな歌」そう言ってまた1曲歌い出す。
僕だって、ウタの歌が世界で1番上手いって思ってる。
ウタは、新時代を築いていく僕の可愛い妹なんだって、分かってる。
「♪ ただひとつの夢 決して譲れない ♪」
だけど、今こうして聴くと何故だか胸が苦しくなる。
ウタの後ろで幸せそうに演奏する、パンチとモンスター。
そんな3人を見て周りのみんなも今の幸せに浸っている。
『そこに僕はいないんだ』
知ってたさ、僕は余所者だし。所詮は師匠に頼まれて引き取った子程度の認識だよね。
僕だって、愛されたい。
『ししょー…』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫苑(プロフ) - 完結おめでとうございます！ (2023年3月5日 14時) (
レス) @page46 id: 44ea1afdd3 (このIDを非表示/違反報告)
穹(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉話が更新される度ほんとにワクワクしながら読ませてもらっていました！何回も読ませてもらいます！お疲れ様でした！ (2022年9月16日 21時) (レス) @page45 id: 17ca666086 (このIDを非表示/違反報告)
はくろー(プロフ) - 完結おめでとうございます！嬉しい気持ちではありますが寂しく思います。お疲れさまでした！！ (2022年9月16日 20時) (レス) @page44 id: 284adcf210 (このIDを非表示/違反報告)
ココ丸(プロフ) - とっても素敵な作品です！本当に泣いたり笑ったり楽しませていただきました。だいっすきです！新作等たのしみにしていますね！♪ (2022年9月16日 20時) (レス) id: 17402642c9 (このIDを非表示/違反報告)
はくろー(プロフ) - おもろかったです!更新を楽しみにしてます(*^ ^*)頑張ってください♪ (2022年9月15日 20時) (レス) @page40 id: 284adcf210 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パチュリー | 作成日時：2022年9月12日 3時
