【ONEPIECE】泡の淡【赤髪海賊団】

泡が16つ ページ28

『あ！見つけたホンゴウ。聞きたいことがあるんだけど、今時間いいかな？』

普段より雲の位置が低く、空が灰色になりつつある今日。珍しく、船も島に到着したと同時に止まっている。
みんなが急ぎ足で何か準備をしている。
暇で、医学本を読みながら勉強をしていたら聞いたことの無い病名が出てきてホンゴウに尋ねることにした僕。

「すまん、今手が離せないんだ。後にしてくれ。」

そう言って、普段は温厚でなんでも優しく教えてくれるホンゴウの態度が今日は一段と冷たく感じる。
ホンゴウに『う、うん。ごめんね忙しいのに話しかけ』そう言って僕は別の人の所へ向かうことにした。

1人ぽつんと立っている僕の周りを、船員のみんなが汗をかきながら忙しなく働く。
そんな姿を見るだけなのが嫌で、近くにいたベックマンになにか手伝えることはないかと聞く。

『ベックマン、みんな忙しそうだけど。僕も手伝うよ』
「いいや、大丈夫だ。お前は部屋で本でも読んでるといい」

ベックマンは、普段とは変わらないが目の奥が少し揺れていた。そんなに僕に手伝って欲しくないのかな。
『わかった…ごめんね』そう言って背を向けてシャンクスの所へ向かうことにした。


＿＿＿＿



『シャンクス…』
「お！どうしたA」

シャンクスは変わらず普段のまま、僕と目を合わせて話してくれた。それに安心して、上がっていた方をゆっくりと下げて声を捻り出す。

『あ、あのさ。この病名なんだけどシャンクス聞いたことあったり…』
「シャンクス〜！アタシやっぱり持ち上げられない！」

また、拒否されるんじゃないかと本を持ち震える手を、服を掴んで何とか落ち着かせシャンクスに話しかければ、途中でウタが割り込んでくる。
ウタは僕を見て驚きながら、目を右往左往させシャンクスに助けを求めるように目を合わせる。

「悪いな、A。今、少し手が離せなくてな後でもいいか？」
『…うん、ごめんね邪魔して』

そう言って離れていく僕。少し立ち止まって振り返れば、シャンクスとウタが楽しそうに話しているのが見えた。
やっぱり、家族みたい。絵本に出てくる、憧れの。

ポツポツと雨が降ってきた、雲が黒くなって遠くの方で雷がなっているのがわかる。頬につたう冷たい雨。
ある島では、雨は恵みだと言う。

全身がびしょ濡れになるのが分かる。
冷たい。


『僕が居なくても、みんなは楽しそう』

そう言いながら、船から降りて街に向かって歩き出した。

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