【ONE PIECE】月と太陽。【エース】

11 ページ11

静かなリビングにやたらと響くひくひくと喉を鳴らす音。
　
『ぅううー‥お"に"ぃぢゃぁん"‥っ』

「おーおー。悲しいなぁ可哀想に」

Aの隣に座るサッチは困ったように眉を下げ頭を撫でる。
聞きたい事は山程あるが今は何も言葉は掛けない。


「落ち着け。にーちゃんが居てやるからダイジョーブだ」

ポンポンと頭を撫でながらテレビのリモコンに手を伸ばす。柔らかい髪に指を絡め画面を見たままサッチが話し出した。

「今日もマルコが帰りに寄るってよー。ついでに飯食わせろってさ！あいつほんと家が好きだよな〜」

『‥、こんな顔わらわれちゃう』

「だろーな！傑作だぜその顔」

ゲラゲラ笑いながら膝を叩くサッチをAが見上げる。いつも優しい兄は、きっと沢山の事を我慢して私の側に居てくれるのだろう。
マルコもそうだ、いつも私たちを気にかけてくれる。



　
『お兄ちゃん、‥‥聞いてくれる？』

「ヨシ来た！どーんと来い！」

『ほんと‥調子いいんだから』

ふはっと笑ったAは、ぽつりぽつりと先程の出来事を話す。口に出せば出す程恥ずかしくて兄の顔を見る事は出来なかったけど、Aの手を握って胡座に頬杖をつながらその憎い程に愛らしい横顔を見る瞳は、慈愛に満ち溢れていた。


話し終わって、暫く沈黙が続く。
それは居心地が悪いものではなく、心がスッと落ち着いてゆく心地好い時間だった。
　
　
「声上げて泣く程‥。好きなやつに出逢えたんだな、良かったじゃねーか」

『‥そう、だよね』

えへへと照れてサッチの膝をばちばちと叩く。複雑なシンキョーだわ、何て中指を立てる兄は嬉しそうに綺麗に並んだ真っ白な歯を見せて笑っていた。そこにタイミング良く玄関のチャイムが鳴る。どうやらマルコが業務を終えてここに寄ったのだろう。

『はーーい！おかえ、‥‥あ、れ？』

ガチャリ、ドアを開ければ腕を組んだマルコ。
と、エースが玄関先に立っていた。

「まーた確認しねーで開けたのかよいA！」

『うげ‥それよりどうしたの？エースくん忘れ物？あれ、うち来てないか』

「俺が来たらこいつが門の前うろうろしてたから声かけたらな、謝りたいんだってよい。とりあえず話し合いなら中に入れ」

マルコがエースの腕を引き玄関を閉める。
奥からサッチがマルコ酒飲むかー？と言いながら出てきた。エースの姿を見て目を細める。

「ちょっとだけ話をさせてください。お邪魔します」

丁寧に頭を下げたエースを無言で見下ろしたサッチ。

12→←10

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す