1 ページ1
．
いつからここにいるのか覚えてない。
毎日働かされ、畑、道、川。
ひたすら土を運び、石を積んで作った。
目立たぬように、殴られぬように、
いかに傷を作らず１日を過ごすか、
そればかり考えて生きていた。
夜になれば残飯を投げられ、争うように食べた。
なかでも水は格段に貴重。
這いつくばり泥水を舐めて生きてきた。
「海賊が島に？‥うちにゃ用はないだろ、こんな汚ぇガキの使いっぱしりしか居ねんだ」
「盗まれるもんなんて無え、心配すんなお前ら」
鉄格子の向こうから聞こえる大人たちの囁き。薄暗い部屋に裸電球だけがチカチカと揺れ、その下ではトランプで賭け事が始まる。
(‥やっぱりほら来た、ハートのキング)
(ばかだな、何でそれを切るんだよ)
いつの間にか覚えたトランプ。いつかやってみたい、そんなふうに考えていたら、ガチャリと扉が開き、自分以外は牢屋の奥へ一目散に逃げる。
(しまった、夢中になりすぎた)
腕を捕まれ、小屋の外へ放り投げられた。
冷たい土の感触。
「てめぇが見てたせいで負けた‥気に食わねぇ！！」
ビュン‥、角材を振り上げる音に体を丸め力を込める。
ビシッ‥！
ビシッ‥！
(よく見て‥ちょっとでも‥！！
痛くない場所に、っっっ)
『うぅ‥、！！！』
いつの間にか身に付いた業。
これが、類い希なる精度を誇る見聞色の始まりだったとわかるのは、もう少し先のお話‥
「はぁ‥はぁ、しぶといクソガキが‥」
もう動けないと思われたのだろう、そのまま蹴り上げられ男はまた小屋に戻っていった。どのみち逃げ場所もない。街も子供を買って仕事をさせている。小屋の悪人たちとグルのこの島だから逃げてもすぐに報告され酷い目に合う。
ふと、思い出した。
(カイゾクが来たって‥何だろう。)
酒盛りで盛り上がる悪人たちの声を聞き、弾かれたように走り出す。すぐ近くの海辺が騒がしい。
声を頼りに、その場所へ全速力で走った。
「キラー‥こんな夜更けにガキが１匹」
「放っておくか、捕まえるか‥」
「‥‥様子見だ、宝が目当てかも知れねェ」
その時は八つ裂きにしてやる。そう言って真っ赤な髪は不気味に揺れ、薄い唇が口角を上げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 470人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
嫁子ちゃん。(プロフ) - 愛さん» 愛さんありがとう〜〜😭最近ずっとしんどいことが続いてたんですが、愛さんの言葉で救われました😢私の描いたキッドが上手く伝わってて嬉しいです。必ずまた出します！どうかこのまま応援宜しくお願い申し上げます‥🥰 (2022年3月10日 12時) (
レス) id: e5a69cc9ba (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 初めまして！嫁子ちゃん様の夢小説を拝見しているものです。その中でもキッドがメインのこの小説が大好きで何度も読み返しています。また、お手隙の際にキッドとの夢小説の新作を書いて頂けますと幸いです♡ (2022年3月10日 2時) (レス) id: 37bfcbe86a (このIDを非表示/違反報告)
嫁子ちゃん。(プロフ) - ツバメさん» こちらにもありがとうございます🥰そうなんです！！今はまだすぐには書けないんですけどそれは絶対に書こうと思ってました‥！ので気長に待ってもらえると嬉しい‥😭ﾂﾊﾞﾒさんの為にも必ず書きます🌸 (2022年3月7日 23時) (レス) id: e5a69cc9ba (このIDを非表示/違反報告)
ツバメ - 読んでもう完結してしまったなとゆう感じで楽しさワクワク色んな事がいっぱいキッドやキラー皆の絡みがあって興奮とワクワクしながら読んでました 無理かも知れませんが特別編でキッドの海賊団と彼女の海賊団が再会するのと再会してからの皆と少しの絡みが見てみたい (2022年3月7日 23時) (レス) id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
嫁子ちゃん。(プロフ) - Suuさん» suuちゃん！コビーのお話にもコメントくれましたよね！ほんと、いつもありがとうございます(ToT)そしてファンだなんて‥最高だ嬉しすぎる(；∀；)もう少しで続編あげますので、もう暫くお待ちください！あと、呼び方ですが気軽に呼んでください！ (2021年7月1日 7時) (レス) id: 168203fbed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：嫁子ちゃん。 | 作者ホームページ：https://Twitter.com/yomeko_zzz
作成日時：2021年6月3日 15時
