【ONE PIECE】ひっくり返せよ、全部。【キッド】

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キッドは姿の見えないAを探しながら食堂までやって来た。

　
「チビ知らねェか？‥‥何やってんだお前ら」

　
　
呆れるキッドの前には脱け殻になったヒートが床に転がっている。キラーまで何故か呆然と一点を見つめ動かない。目の前には怒った表情のAがアラベスの膝の上に座っていた。


　
『キッド、私もうこの２人の話は聞こえない』

「なんだまだ怒ってんのか」

『とくにこの２人はいつも私にだめだめばっか』

「まぁ‥お前の母親みてェだよな」

『‥‥お母さん？』

「そうだ、母親ってのはな常にだめだめうっせェ生き物なんだ」

『お母さん‥』

　
　


その単語を口にして何か考えるA。アラベスがその顔を覗けば不安そうに揺れた瞳と目が合った。

　
『‥‥さいごに会いたいのはそのうるさいお母さん、なの？』

顔をあげたAは真っ直ぐキッドを見上げる。意味がわからない、そんな顔をした全員を見渡して小さな手をキュッと握り声を絞り出した。


　
『‥‥みんな、さいごはお母さんって泣いてた‥から誰だろうっておもってた。本でしらべても、お母さんってコドモをうむジョセイって書いてあるし‥』

そんなイヤな人がしぬ前に会いたくなるの？どうして？まんまるの瞳が知りたいとそう叫ぶ。


　
「キラー‥娘に読ませるべきは絵本だなァ？」

「違いない‥‥。」

　
　
ニヤリと口角を上げたキッド。それに何度も頷くクルーたちにAはハテナを浮かべる。エホン？悩む顔を見てその小さな体を脇に抱え、食堂を飛び出した赤のコート。その背中はどこか嬉しそうで、キラーもその背を追い掛けた。

　

「‥荷物持ちがいるだろう」

「あぁ、全部買うぞ」

『やったーー！キラー！いそぐぞ！』


　
キラーはその体を片手に抱き上げ歩く。もう怒っていた事が何処かに飛んでいったように、ご機嫌になったお姫様はパチパチとその物騒な異名を持つ仮面を何度も叩くのだった。暫く歩けばメインストリートに入る。急に人通りが増えたが、街中の人がその大きな二人に道を譲り、恐れおののきその姿を見送る。


「ちょっと！待ちなさいよ！」


その声に反応した３人。鬼のような顔で人混みからずんずんとこちらに向かって歩いてくる金髪の女性。キッドの前に仁王立ちして立ちはだかる。

「‥‥なんだお前」

「あんたのせいで！昨日は散々恥かいたのよ！！」

その悲鳴にも近い声に敏感なAの顔が歪む。その反応に、女の矛先はAに向かった。

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