28大きな月。 ページ28
身体の芯から疲れ果てて、味のしない夕飯を無理矢理胃に押し込み部屋の床へ倒れ込む。
このままここで眠ったら体が痛くなるかなぁ、なんて目を瞑れば目蓋の裏に浮かぶAちゃんの笑顔。
ここを乗り越えれば強くなる、ガープさんの言葉を思い起こし、まだ閉じていたい目を開いてシャワーで汚れを落とす。
ぼーっと暫く足元に目線を落とし茶色い水を眺めれば、それはやがて透明に変わる。
髪を拭き上げる腕も上がらないくらい満身創痍。
身体中の傷がピリピリと疼く。
Aちゃん、もう眠ってるかな、
ご飯食べたかな、
隣の部屋は変な男じゃないだろうか、
思わず苦笑いをして頭を振り今日の訓練だけを思い返した。すると部屋にないはずのでんでん虫の音に驚いて、わ！！と声が出る。周りを見渡し、耳に受話器を当て警戒しながら出れば、僕はまた心底驚いたんだ。
「‥はい、」
『あれ、？‥コビー？だよね』
それは、まさかの人の声で。
「A、ちゃん？！どうして、」
『あ、良かったコビーだ。あのね、
昼に荷物をクザンさんに運んでもらったの、
帰って来たら部屋にクザンさんとヒナさんと
コビーにそっくりのでんでん虫があってね、』
それからね、
その鈴が転がるように弾む可愛らしい声。
今日の出来事を楽しそうに話してくれる君が
可愛くて仕方なく頬が緩んだ。
あれだけ疲れきった体は空を
飛べそうなほど軽くなり、
頭ははっきりと冴えてくる。
君の声を一語一句聞き逃したくなくて、
僕はその大好きな声に耳を傾けた。
『明日からそのお店で働くから心配しないでね』
「良かったね、いいお花屋さん見つかって」
『うん！コビー、無理しないで早く寝てね』
「ありがとう。また電話していい？」
『本当？‥またかけてくれたら嬉しい、な』
「疲れが飛ぶからまた電話する」
『えへへ、嬉しい‥』
「好きだよAちゃん、」
『‥‥ん、私も好き。』
「「おやすみ」」
真っ赤になりながら二人は同じ顔で受話器を置く。その暖かい気持ちのままベッドに潜れば愛しい声の余韻はお互いを穏やかな眠りに誘う。
澄み切った月は二人に忍び寄る濁った影を払い退けるかのように幼い二つの寝顔を照らしその体を優しい光で包んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 433人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
嫁子ちゃん。(プロフ) - 風早紫音さん» 最高だなんてー！勿体ないお言葉、ありがとうございます頑張れるぅぅ😭必ず続編書きますので、どうかお待ちください❤️ (2022年10月16日 11時) (
レス) id: 9b6f360aec (このIDを非表示/違反報告)
風早紫音(プロフ) - 最高としか言えない…！！コビー推しだからほんっと嬉しい！これからも楽しみにしてます！ (2022年10月16日 9時) (レス) @page50 id: 3b05bc2eb8 (このIDを非表示/違反報告)
嫁子ちゃん。(プロフ) - ユヅさん» ほんっっとに嬉しすぎるお言葉ありがとうございます‥！！😭コビーくんきっと大人気になるはず‥！私もコビーくん大好きです🥰もちろん新しい作品は作りますよ😉 (2022年8月21日 4時) (レス) @page50 id: 4d9705b736 (このIDを非表示/違反報告)
ユヅ(プロフ) - この小説を機にコビー様のファンになりました！神作品すぎます泣コビー君の作品少なくてがっかりしてたけどこの作品見てハァハ(感動して癒されました！！主さんはコビー君推しですか？😆コビー君の作品は新しく作る予定はございますか！？とても好きです応援してます (2022年8月21日 0時) (レス) @page48 id: 9898b37776 (このIDを非表示/違反報告)
嫁子ちゃん。(プロフ) - にーにさん» ほんとーーー？！！嬉しいありがとう❤️続編頑張るからね〜〜！！期待してて！👌 (2022年8月20日 18時) (レス) id: 4d9705b736 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：嫁子ちゃん。 | 作者ホームページ：https://Twitter.com/yomeko_zzz
作成日時：2021年5月20日 0時
