諭吉と愛のネコ(5) ページ49
「……ねえ、異能が言ってたよね。過去に身悶える程度で、絶望すれば解放される、って。『過去に身悶える』って、まさにこういうことだよね?」
レイヤは、言葉通り、身悶えている。
「それで、絶望すれば解放されるんだよね? この場合の『絶望』って、諭吉に抱いてもらえない悲しみに、絶望するのかな?」
来るべき絶望に、眉をしかめて。
「それとも……、気持よすぎて、何も考えられなくて、もうムリって感じの絶望、なのかな? 私がいつも諭吉に抱かれる時みたいに……」
吐息に唇を濡らし。
「気持ちよさが限界まで来ちゃって、……もう、我慢できなくて……、イっちゃうってこと、なのかな……」
潤んだ瞳で、諭吉を熱く見つめる。
「あのね、なんとなく……、そういうタイプの絶望が来そう。悲しい絶望じゃなくて、気持ちよすぎる絶望」
夜毎、諭吉に見せた、あられもない表情で。
「でも、それって、『絶望』って言うより……、『絶頂』、だよね」
諭吉は何度も、この表情に奪われた。
レイヤを抱く度に。
思考も、常識も理性も。
おおよそ人として所持すべき要素を、あっけなく奪われて。
だから諭吉も、レイヤと共に、すべてをかなぐり捨てて。
……果てるのだ。何度も。
しかし、今のレイヤは。
諭吉が触れずとも震え、諭吉の愛のないままに、絶頂を迎えようとしている。
自分以外の何者かに、レイヤを奪われたも同然で。
胸が張り裂けんばかりの悲しみと絶望が、諭吉を襲う。
……異能に心を蝕まれているのは、レイヤではなく自分ではないか、と思える程に。
「……うん、でも、これってある意味、いいことなのかな。だって……、このままイっちゃえば、終わるって事でしょ?」
汗で湿ったレイヤの黒髪が、風にパタパタと吹かれる。
「痛くもかゆくも、苦しくもない。ただ気持ちいいだけ。これでクマさんの異能が満足して、クマさんも、愛してる人との夢の時間を過ごせるなら……、いいことだよね」
前髪を払うように動く、レイヤの手は。
涙を拭っているようにも見えて。
「そう考えたら、私はこれくらい全然平気。……大丈夫。私は大丈夫」
大丈夫。
その言葉を耳にした瞬間。
諭吉は叫んでいた。
「大丈夫なものか!」、と。
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カナコ(プロフ) - 名無し40367号さん» 返信ありがとうございます!だいぶ更新が出来ずにいて、長々とお待たせしてしまって、本当に申し訳ありません。今後もゆっくりになってしまいますが、この作品が好きと言ってくださる名無し40367号様に飛んできていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします!! (2023年3月30日 15時) (レス) id: 877faacbee (このIDを非表示/違反報告)
名無し40367号(プロフ) - カナコさん» 返信ありがとうございます!本当にこの作品が好きで通知来た瞬間嬉し過ぎて飛んで参りました。本当にありがとうございます。 (2023年3月30日 14時) (レス) @page40 id: 7bff5eda1b (このIDを非表示/違反報告)
カナコ(プロフ) - 名無し40367号さん» コメントありがとうございます!ものすごく久しぶりに読者様からコメントいただき、今ちょっとどうしていいかわからないくらい動揺してます。これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります!コメント本当にありがとうございました!! (2023年1月10日 18時) (レス) id: d8c57c683a (このIDを非表示/違反報告)
名無し40367号(プロフ) - いつも神作品をありがとうございます!これからも頑張ってください! (2023年1月10日 18時) (レス) @page24 id: 7bff5eda1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カナコ | 作成日時:2022年5月18日 12時