諭吉と銀狼とネコ(７) ページ43
異能の声には、もはや威圧感も、邪悪な気配も感じられなかった。
諭吉は、改めてクマの口が動いていないことを目視で確認する。
今までの台詞が、クマではなく異能の意識下による発言であることは明白だ。
だとすれば……。
異能は、己を異能として自認し、宿主であるクマの存在も理解している。
それどころか、クマを気遣っている。
クマが愛する者を亡くした悲しみ、苦しみを、レイヤに聞かせる中で。
クマの秘めたる苦悩を和らげようとしている。
これまで、クマの意識を乗っ取って。
人の過去の悔恨を増幅させて、精神を蝕む、悪き存在だと思っていた、異能。
しかしそれは、レイヤの呼び掛けの末に。
諭吉が思っていたよりもずっと、人としての情を持ち合わせていることを垣間見せた。
宿すクマの心情に近いものがある。
人の話を理解し、対話し、歩み寄る柔和な心根があったのだ。
……恐らくは、銀狼などよりも、ずっと。
クマの異能には、無言を貫くか、武力でしか対峙してこなかった諭吉に。
この一連の、レイヤと異能のやり取りは。
新しい世界の理を感じさせた。
「……どうした、娘。よもや、その聞く耳も、儂と同じく今宵限りか？」
打ち解けた相手に、軽口を叩くような異能の声。
夜明けにクマと話をして欲しい、と言われたレイヤは、当然驚いて、無言でいたが。
異能の催促に、ますます頬を赤くして、
「も、もちろんです！ あ……、いいえ！ 大丈夫です！ 今夜限りじゃないです！ ちゃんと……、言います。クマさんに、話を聞かせてくださいって言います！」
諭吉と繋いだ手は、安堵のためか、少し力が抜けたようだ。
異能の声も、朗々と答える。
「……ああ、そうだ。夜が明けた後、その耳を貸すが良い」
「はい！ クマさんの話、この耳で聞きます！ 夜が明けた後に！」
「そう……、夜の合間は、邪魔は出来ん。夢を見ているのでな」
「……え？」
「今、このクマは、夢を見ている」
「……夢？」
「一年の内の限られた数日のみ。異能と呼ばれる、この儂が表にいる間のみ。クマは眠りの中で、夢を見ている。夢の中で……、愛する者と同じ時を過ごしている」
「！？」
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カナコ(プロフ) - 名無し40367号さん» 返信ありがとうございます！だいぶ更新が出来ずにいて、長々とお待たせしてしまって、本当に申し訳ありません。今後もゆっくりになってしまいますが、この作品が好きと言ってくださる名無し40367号様に飛んできていただけるよう頑張ります！よろしくお願いします！！ (2023年3月30日 15時) (
レス) id: 877faacbee (このIDを非表示/違反報告)
名無し40367号(プロフ) - カナコさん» 返信ありがとうございます！本当にこの作品が好きで通知来た瞬間嬉し過ぎて飛んで参りました。本当にありがとうございます。 (2023年3月30日 14時) (レス) @page40 id: 7bff5eda1b (このIDを非表示/違反報告)
カナコ(プロフ) - 名無し40367号さん» コメントありがとうございます！ものすごく久しぶりに読者様からコメントいただき、今ちょっとどうしていいかわからないくらい動揺してます。これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！コメント本当にありがとうございました！！ (2023年1月10日 18時) (レス) id: d8c57c683a (このIDを非表示/違反報告)
名無し40367号(プロフ) - いつも神作品をありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2023年1月10日 18時) (レス) @page24 id: 7bff5eda1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナコ | 作成日時：2022年5月18日 12時
