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諭吉と銀狼(12) ページ34

「身勝手な要求だ。……私の側にいろ、レイヤ」
「え……」

「生涯を、私と共に歩むと誓え。片時も離れるな。常に私の側にいろ。……愛している」
「諭吉……」

こんな時に、愛を語るのは。
レイヤを失いたくないからで。

レイヤを守る事が出来るのならば、どうなろうと構わない、という考えは。
冷たい目をした銀狼の独りよがり……、身勝手だ、と。
今更ながらに気づくのだ。

「頼む、レイヤ」

愛している。
共にいたい。

「私の身勝手な要求を聞いてくれ」

側にいて欲しい。
これから先も、ずっと。

「……目を閉じるだけで良いのだ」

二人で、生きて行きたい。
レイヤを失いたくはない。

「レイヤ……」

諭吉は、レイヤの手を握り返した。
愛と、……懇願を込めて。

レイヤが口をつぐむ。

そして。

ゆっくりと瞼を閉じた。

やっと、状況を理解したのか。
諭吉の言う事を素直に聞いて。
目をつむったレイヤの顔は、眠っているようで。

これで諭吉の……、銀狼の行いを止めるものはなくなって。
その事実に、一欠片の無念を抱く前に。
諭吉はただ、レイヤの寝顔に、込み上げる愛おしさだけを享受して。

握り合っていた手を、自ら離した。

これで良い。
元々、レイヤが何も知らずに、眠っている間に済む事だった。

これで良いのだ。
血を目にするのは……、自分だけで良い。

あとは、この手で。
レイヤの感触の残る、この手で。
刀を抜けば良いだけだ。

……と、諭吉が立ち上がりかけた、その時。



「穴が開くよ」



突然の声。
諭吉の動きを止めるには充分すぎる程に、重厚な。



「そんなことしたら、心に穴が開く」



目をつむったまま、眠ったようなレイヤが。
寝言にしては、はっきりと感情を……、怒りをにじませて。



「本当はしたくない事のために、その刀を使ったら、諭吉の心に穴が開く」



それは、間違いなくレイヤの声であり。
レイヤの意志によって発せられているのだ、との証明に。

大きく開かれた、レイヤの黒い瞳が。
諭吉を捕らえた。

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設定タグ:文スト , 福沢諭吉 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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カナコ(プロフ) - 名無し40367号さん» 返信ありがとうございます!だいぶ更新が出来ずにいて、長々とお待たせしてしまって、本当に申し訳ありません。今後もゆっくりになってしまいますが、この作品が好きと言ってくださる名無し40367号様に飛んできていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします!! (2023年3月30日 15時) (レス) id: 877faacbee (このIDを非表示/違反報告)
名無し40367号(プロフ) - カナコさん» 返信ありがとうございます!本当にこの作品が好きで通知来た瞬間嬉し過ぎて飛んで参りました。本当にありがとうございます。 (2023年3月30日 14時) (レス) @page40 id: 7bff5eda1b (このIDを非表示/違反報告)
カナコ(プロフ) - 名無し40367号さん» コメントありがとうございます!ものすごく久しぶりに読者様からコメントいただき、今ちょっとどうしていいかわからないくらい動揺してます。これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります!コメント本当にありがとうございました!! (2023年1月10日 18時) (レス) id: d8c57c683a (このIDを非表示/違反報告)
名無し40367号(プロフ) - いつも神作品をありがとうございます!これからも頑張ってください! (2023年1月10日 18時) (レス) @page24 id: 7bff5eda1b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カナコ | 作成日時:2022年5月18日 12時

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